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今どきの住まい・暮らし

2022.07.13

あなたのライフスタイルのヒントを探す ―プロに学ぶ、3つのマイルール ―

インテリアスタイリスト 窪川勝哉さん

雑誌やテレビ、カタログなどで巧みなコーディネート術を披露しているインテリアスタイリストの窪川勝哉さん。2018年に購入したこの家には、第一線で活躍するプロならではの技が随所に施されていました。

INDEX

【1】曲線を足すことで空間にリズムが生まれる

リビングの床にはコバルトブルーの絨毯を。
「フローリングと比べて、絨毯は個性的な空間を作ることができるので、僕は好きなんです」。
ビビッドな色を組み合わせることでモダンな空間になっています。

室内に一歩足を踏み入れると、まず目に入るのは開放感あふれる吹き抜けのダイニングと、鮮やかなコバルトブルーの絨毯が敷かれたリビング。そして、その先の大きな窓からは庭の木々の緑まで見通すことができます。初めて訪れたゲストをもてなす心憎い演出が施されています。

この家は1957年(昭和32年)に建てられた連棟式住宅(テラスハウス)です。窪川さんは歴史あるこの家を自分好みにリノベーションしました。そこには住まいづくりのヒントになるポイントがいくつも隠されています。

仕事柄、多くの空間コーディネートを手がけてきた窪川さんですが、住まいを快適に心地よくするためのルールを伺うと、1つは「空間に曲線を足すこと」だと話してくれました。

もはや窪川さんの趣味の1つともいえるヴィンテージ物件のチェック。
この家は偶然見つけたものだそうで、日本のモダニズム建築の巨匠・前川國男が1957年に建てた連棟住宅です。

「基本的に家は四角で構成されていますが、そこに曲線や丸みのある物を加えると空間に動きや変化が生まれます。たとえば、ラウンジチェアを思い浮かべてもらうと分かりやすいのですが、ラウンジチェアは部屋の中に自由に置ける数少ない家具で、どこに置いても格好よく収まります。それはラウンジチェアを置くことで、空間に変化が生まれるからです。だから、僕は四角でなくていい物は、極力、丸みがあったり、曲線のある物を選ぶようにしています」

開放感あふれるダイニングルームには、ジョージ・ネルソンのペンダントライト「バブルランプ」をチョイス。
また壁面に飾られたスワッグを活かすため、エアコンは壁付けにせず、昔ながらの床置きのものに。

確かにダイニングやリビングには丸みを帯びたオーバルタイプのテーブルがあり、そのほか、チェアやスツール、鏡なども曲線を活かしたアイテムが置かれています。その緩やかな曲線によって、上質さや心地よさも兼ね備えた空間になっています。

直線や面で構成された室内に緩やかに曲線を描くアイテムを加えるのが、窪川さんのコーディネートのポイント。
そうすることで空間に個性も生まれてきます。

【2】適材適所に照明を取り入れて室内に陰影を作る

さらに窪川邸の心地よさを引き立てているのは照明です。ダイニングには形違いの2つの「バブルランプ」が吹き抜けの解放感をさらに強調し、また壁面のシャルロット・ペリアンの照明がリビングの奥行感をもたらすとともに、アートピースのような存在感を放っています。さらにリビングのソファの傍らに置いたフロアランプ「ランパデール アン ルミエール」が、真っ白な壁に美しい光と影を描き出しています。

「照明にはそれぞれ役割がある」と話す窪川さん。1つの照明で空間全体を照らすのではなく、適材適所に照明を置くとドラマチックな空間になります。

この「照明を上手に取り入れる」ことが、窪川さんの2つ目のルールなのです。

「照明は空間全体に影響をおよぼすものだから、位置や光のまわり方にも気を付けて計画しています。日本の家の多くは部屋の中央にシーリングライトを付けて、それだけで空間全体を照らそうとしますが、そうすると光のまわり方がフラットになってしまい、のっぺりした空間になってしまうんです。だから、どこにどんな照明を置くか、適材適所を見極めるようにしています」

ダイニングの壁には、フランスのデザイナー、シャルロット・ペリアンが1962年にデザインした照明が。
事前に取り付ける照明や位置も考慮し、計画を立てるのが大事だと窪川さん。

また、照明と合わせて入念な計画が必要なものとして、窪川さんはコンセントの取付位置を上げました。

映像を投影するプロジェクター用のコンセントを梁の上に取り付けています。

「この家にはリビングの梁の上にコンセントがあります。実はこれはプロジェクター用で、もう1つの梁にスクリーンを吊るして映像を見るために取り付けました。こういうものを後で取り付けようとすると、どうしても配線が露出してしまい、見栄えもよくありません。照明やコンセントは、この先のライフスタイルを想像して取り付けることが大事だと思います」

【3】空間に動きを与える「心地よいノイズ」

2階のベッドルーム。「ここは寝るだけだから」とシーリングライトは取り付けず、真鍮のモビールを吊るしています。
こんな遊び心も窪川さんならでは。「僕にとっては、この揺れが“心地よいノイズ”なんです」。

さらに窪川さんが欠かせないもの、それは「心地よいノイズ」だといいます。

観葉植物のほか、切り花を取り入れてもいいという窪川さん。
「その空間に合う花がきっとあるはず。それを探すことはインテリアと向き合う時間になりますよ」。枝ものも長持ちするのでおすすめだそう。

「僕の中で家具などは基本的に“動かない”もの。だから、観葉植物やモビールなど、空間に動きを与えるようなものを取り入れています。たとえば、寝室に大きなシーリングライトは必要ないと思ったので、取付金具を加工してモビールを吊るしました。それこそ、今は換気する機会も多いので、そのときどきに風で揺れるモビールは部屋のアクセントにもなりますよね」

ときどき2階から吹き抜けに足を投げ出して考え事も。大きな窓から庭の木々の緑を見渡すこともできます。

空間を立体的に構成することで、窪川さんは戸建てのメリットを最大限に享受しています。「自分の好きなものが詰まった空間」は、レトロさを残しながら、モダンな空間になっています。

インテリアスタイリストの窪川勝哉さんのマイルールは、「空間に曲線を足す」「照明を上手に取り入れる」、そして空間に動きを与える「心地よいノイズ」でした。それに加えて、自分の好きな物を取り入れてコーディネートを楽しむ。それが居心地のよい住まいづくりの秘訣であり、もっとも大事なことなのかもしれません。

編集・執筆:石倉 夏枝さん

インテリアスタイリスト 窪川勝哉 さん

インテリア&プロップスタイリスト。数多くの雑誌やTV、カタログなどでスタイリングを手がけるほか、クルマや家電、ステーショナリーなどのプロダクト全般に造詣が深く、幅広いフィールドで活躍している。 東洋大学ライフデザイン学部非常勤講師。

インスタグラム https://www.instagram.com/katsuyakubokawa/


編集・執筆:石倉 夏枝さん
撮影:小島 沙緒理さん

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