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住宅のマネーと制度

2021.03.09

相続税の申告や納税の期限

相続に関して、たくさんの方と話しをしてきましたが、相続税の申告期限は知っていても、相続税の納付期限を見落とされている方が多いという印象があります。相続税の納税は、申告期限までに金銭で一括納付が原則となっていますので、期限までに金銭の準備ができていることがとても重要になります。今回、相続税の申告期限のほかに、相続税の納税方法についてみていきたいと思います。

ポイント

  1. 相続税の納税は、金銭一括納付が原則です。一括納付ができない場合の納税方法もおさえておこう。
  2. 生前に納税対策と同時に分割対策についても検討しておきましょう。

INDEX

相続税の申告・納付期限は「相続開始の翌日から10カ月後」

相続税の申告書を提出しなければならない相続人等は、その申告書を、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に提出しなければなりません。相続の開始があったことを知った日とは、亡くなった日を指すケースがほとんどです。具体的にみていきますが、相続開始日が令和3年3月15日の場合、相続税の申告期限は、令和4年1月15日となります。単純に亡くなった月から指折り数えて10カ月後の同日(この場合15日)とおさえて下さい。

なお、申告期限日が、土曜日・日曜日、祝日に該当した場合は、その翌日が実際の申告期限となります。上記の例でいうと、当初の申告期限日である令和4年1月15日が土曜日であった場合、1月17日(月)が実際の申告期限日ということになります。

この申告期限ですが、相続税の納付期限でもあります。たとえば、相続税の納税額の合計額が1憶円(相続人は長男と次男で、それぞれ5千万円の負担)の場合で、申告期限が令和4年1月17日(月)だったとします。長男と次男は、各人の負担額である5千万円を、原則、令和4年1月17日(月)までに、各人が金融機関から納付しなければなりません。相続税がどんなに高額になったとしても金銭一括納付が原則となっています。

また、納付方法としては、金融機関の窓口から納付する方法のほかに、インターネットを利用したクレジットカードによる納付も可能となっております。ただし、納税額が1千万円未満、クレジットカード利用に伴う決済手数料等がかかるなどの条件もありますので、利用方法を含め国税庁ホームページにてご確認いただけばと思います。

金銭一括納付 原則:相続開始日の翌日から10カ月以内に納付

↓困難な場合

延納制度(金銭分割納付) ・一定の要件のもと申請を行い、税務署長の許可(要担保提供)が必要
・延納できる期間は相続財産のうち不動産の占める割合等により決定
ex)不動産の割合が50%以上75%未満の場合→不動産部分の相続税の分割期間は15年
・金利に相当する一定の利子税がかかる

↓困難な場合

物納制度(現物納付) 一定の要件のもと申請を行い、税務署長の許可が必要
・物納に充てる財産、充てることができる順位が決められている
第1順位:国債等や不動産等 → 第2順位:上場株式等 → 第3順位:動産

相続税は、金銭一括納付が原則という話しをしましたが、金銭一括納付が困難な場合には「延納制度」、延納制度を利用しても納付が困難な場合には「物納制度」が用意されています。図1に相続税税の納税制度について簡単にまとめておりますが、延納制度と物納制度については、利用するための条件が多く、手続きも煩雑になります。
そのため、原則のとおり、金銭一括納付ができるように生前に対策・準備をしておきたいものです。

期限内に申告・納付できるようにする準備のコツ

相続税の申告期限および納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内ということで、基本的には、この10カ月の間に遺産分割を整え、納税資金が確保できている必要があります。特に納税資金の確保という観点から、対策上のポイントを簡単にまとめてみました。

生前に、相続税額の試算を行い、納税資金の目安を確認しましょう

相続対策のスタートとして、相続税の試算から行うことをおすすめ致します。試算の際に、相続財産の洗い出しを行いますので、概算の納税額とともに、相続財産のうち換金性の高い現預金や生命保険金等で、納税資金を賄うことが可能か確認しましょう。

生前に、分割対策を行っておきましょう

相続税の申告期限までに、遺言書もなく、相続人間で遺産分割が整わない場合、原則として下記の相続税額計算上の優遇措置が使えません。

  1. 配偶者の税額軽減(配偶者が取得する財産については、最低1憶6千万円までは相続税がかからない。)
  2. 小規模宅地等の特例(一定の要件を満たせば、土地の相続税評価額を8割もしくは5割減額できる)

遺産が未分割の場合でも、相続税の申告が必要なこともあります。申告期限までに上記の特例を使わず、法定相続分のとおりに各相続人が財産を取得した場合に計算される高い相続税額を、一旦、金銭で納付をする必要があります。つまり、いちどは高い納税資金の準備をしなければならないということです。
そうならないように、申告期限までの納税資金の準備の観点からも、遺産分割がスムーズに整うよう、生前に遺言書を作成されることをおすすめ致します。

なお、申告期限から3年以内に遺産分割が整うなどの条件を満たせば、これらの優遇措置を使った本来の相続税額を計算しなおし、納めすぎた相続税額の還付を受けることは可能ですのでご安心下さい。

納税資金を確保しましょう

納税資金の原資を考える際に、相続財産のうち、金銭や生命保険などの換金性の高い財産で賄うことができれば理想です。相続財産だけで賄えそうもない場合、相続人自らが、納税資金を確保することも検討しなければなりません。

図2:納税対策として生命保険金の活用事例(相続人が3名の場合)

相続人3名(配偶者と子供2名)が法定相続分で遺産を取得した場合の税額軽減後の相続税​

課税価格合計額 相続税の総額
10,000万円 315万円
15,000万円 748万円
20,000万円 1,350万円

生命保険金の非課税枠

500万円✕法定相続人の数(3名)=1500万円までは非課税
課税価格合計額が2憶円の場合の相続税の総額は1,350万円
∴生命保険金の非課税額1500万円を納税資金とすることが可能

納税対策の代表的なものとして、図2のような生命保険金の活用事例があります。他に不動産が多く、賃貸建物がある場合には、生前に、相続人への相続時精算課税による贈与や法人化を利用するといった方法も検討項目としてでてきますので、必要な場合は、事前に専門家にご相談いただければと思います。

一次相続時よりも二次相続時のことを考えると、配偶者の税額軽減等の特例が使えないなどの理由により、相続税が高くなる傾向にあります。そのため、二次相続時に納税対策が必要になる場合が多いのも実情です。ぜひ、二次相続を見据えた相続対策を検討していただければと思います。

※本文で紹介させていただいた内容は概略となります。また、2021年2月17日時点の情報に基づいております。実際のお取引の際には、改めて詳細をご確認ください。

執筆・情報提供

利根川 裕行(税理士)

利根川税理士事務所 代表。
大学卒業後、大手会計システム関連の会社に入社し、約8年間営業に従事。
その後、税理士を目指し会計事務所に転職してから、他業種の法人業務に携わる。
都内税理士法人の資産税部責任者として、多くの資産税案件に携わったのちに、
令和元年12月に、池袋にて独立開業。

Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd

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