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今どきの住まい・暮らし

2021.09.23

甘く見るとストレスの元に。二世帯住宅の音問題、どうしてる?

家の中で聞こえる音には、さまざまなものがあります。中には大きなストレスになる音の問題も。特に二世帯の間で気になりはじめると、お互いの関係にまで影響が出ることもあります。快適な二世帯住宅を実現するためには、音問題はぜひ避けたいものです。プランニングや建物の仕様など、音問題を避けるためのポイントを考えてみましょう。

INDEX

完全分離型でも起こる音問題

玄関や水まわりを含め、すべて完全に切り分けたタイプの完全分離型の二世帯住宅の場合、音の問題は生じないと思われがち。でも実は、それでも注意が必要です。

二世帯の生活リズムやライフステージが異なることで、生活音が気になる。

近年、子世帯が共働きのケースが増えています。そうすると、仕事から帰ってきて夜の間に掃除や洗濯をしたり、遅い時間に食事をしたりすることも。休日の前夜であれば、遅い時間までテレビを視たり音楽を楽しんだりすることもあるでしょう。昼間は気にならないような生活音も、静かな夜は意外に音が伝わります。ドアの閉まる音や廊下を歩くだけの音ですら響いてしまうことも。

伝わり方は複雑で、離れていても聞こえることも。

1階が親世帯、2階が子世帯の完全分離型の場合、1階の親世帯住戸に生活音が届いて、寝ている親の睡眠の妨げにも。反対に、親世帯は耳が遠くなってくると、テレビの音や話し声が大きくなり、子世帯住戸に必要以上に聞こえてくる場合もあるでしょう。
音というのは、固体を通して伝わる場合と、空気を震わせて伝わる場合の両方があります。思わぬところから伝わって耳に届くことも。上下、隣接だけでなく、少し離れていても音は伝わる場合があるのです。

もっとも注意すべき音は、水まわり

生活音の中でも水の音は一定時間、そして毎日続く音であり、暮らしから切り離すことができません。また、水まわりに欠かせない換気設備も、騒音の原因になることがあるので注意が必要です。二世帯住宅の暮らしに支障がでないように、水まわりの音に配慮することは、実はとても重要なのです。

水が落ちる音を吸収する設備を選ぶ

 浴室ではシャワーやお湯をかける音、キッチンではシンクで水を流す音が直接伝わる場合があります。特に夜間など静かな時間帯には、思いのほかまわりに響くものです。
最近は、浴室の床材、キッチンシンクや水栓も進化し、湯水の落ちる音はかなり吸収されて静かになってきています。二世帯住宅の場合は特に、こうした衝撃が吸収されるタイプの設備を選ぶといいでしょう。
 

水が流れる音は配管の位置に注意

 水まわりで発生した湯水が排水管を流れる音は、配管経路に沿って伝わります。
 排水の流れる勢いや、配管の被覆対策によっても影響は異なりますが、寝室の天井裏や壁に近い場所への配置は避けるようにしましょう。

換気の吸排気など空気の流れる音

 換気扇の音や空気の流れる音も、意外と気になるものです。空気の流れる音などは、どこから伝わる音なのか分からないこともあります。以前、排気ダクトが騒音の原因だったケースもありました。離れた場所の音が、配管を伝わって思わぬ場所まで届くこともあるため、換気関係の配管ルートも気をつけたい点です。

計画段階から始める二世帯住宅の音対策

それでは、二世帯住宅の音問題を解決するためのプランのポイントをご紹介します。

プランのポイント

  • ①親世帯の寝室と浴室や洗濯スペースが隣接しないよう、間に収納空間をはさむ。
  • ②リビング側の壁の下地に遮音シートを貼る。
  • ③2階からの音や配管から伝わる音を軽減するために、天井裏に遮音シートを貼る。
  • ④ドアが閉まるときの音対策として引き戸タイプにして、扉が閉じる際に閉まる速度が遅くなる機能をつける。
    ※ただし、引き戸はドア(開き戸)に比べて音が漏れやすいので、家族の暮らし方に合わせて、ドアと引き戸のどちらを選択するか検討しましょう。
  • ⑤シンクは落ちる水の音を吸収し、食器が当たっても割れにくいタイプのもの、また、水栓は水の落ち方がソフトなタイプを使う。

配置プランで水まわりと寝室を隣接させない工夫を

二世帯が上下階に分かれる場合、水まわりの位置はできるだけ上下の同じ位置に重ねて配置し、下の階への影響を避けましょう。
隣接した二世帯住宅の場合は、水まわりの隣に寝室を配置しないプランがおすすめです。どうしても隣接してしまう場合は、間に少しでも収納スペースをはさめないか検討してみてください。(プラン図①②)収納スペースに衣類などの物が入ることで音の吸収効果も期待できます。

資材などの性能で遮音性を高める

配置プランに配慮しても、それでも伝わる音はあります。プランの都合上、どうしても音の伝わりを避けられないことも。そんなとき、建材の選び方によっては、その性能をうまく利用して音の伝わりを軽減させることにもつながります。以下はほんの1例です。

  • 壁や天井の下地に遮音性能のある断熱シートを貼る(プラン図②③)。
  • ドアを引き戸にして、閉じる際に扉が閉まる速度が遅くなる(指詰め防止効果)機能をつけることで、バタンという衝撃音を防止する。(プラン図④)

以上のように音の軽減方法はあるものの、暮らしの中で発生する音は生活から切っても切りはなせないものです。
同じ音でも聞く人によって、気になることもあれば、たいして気にならないこともあります。二世帯住宅では、音についてできるかぎりの対策は重要ですが、最終的には、お互いを思いやって、理解し合う気持ちが大切であることは言うまでもありません。

二世帯住宅を考えるにあたって、まずは、お互いの生活・暮らし方の価値観を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。住宅展示場を二世帯で一緒に見学をすることは、そのいいきっかけになります。音対策についても、どんな工夫や対策ができるのか、ぜひ、モデルハウスでヒントを探してみてください。

執筆・情報提供

川道 恵子(一級建築士)

(株)住まいと街設計事務所 代表取締役
住宅メーカー設計部にて、戸建住宅の設計業務 デベロッパーにて、マンション等の企画・監理業務を経て設計事務所において不動産開発業務に携わる。土地の活かし方、住宅の間取り提案等、幅広い実績多数。

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