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趣味・生活

2022.12.08

浦和Stories vol.13|「STEM教育」教育実践研究者・野村泰朗さん、西原舞さんインタビュー

毎回、浦和にゆかりのある方にご登場いただき、エピソードを通じて、上質で新しいものを生み出す「浦和」の街と人の魅力を伝える「浦和Stories」。

今回は、浦和住宅展示場Miraizuでロボットづくりのイベントを開催していた埼玉大学准教授・STEM教育センター代表の野村泰朗(のむらたいろう)さんと同センター監修「学童保育ココカラKIDS」の西原舞(にしばらまい)さんに、浦和の街とSTEM教育について伺いました。

INDEX

――野村さん、西原さんにとって、文教都市といわれる浦和の街に対して、どんな印象をお持ちですか?

野村さん:「古くから住んでいる人と新しく来た人とが交わる街」という印象です。趣のある建物や街並みが残っている一方で、住宅街では建て替えも進んでいて,活発な新陳代謝が感じられますね。私も浦和在住ですが、私のようにほかの地域から移り住んできた者にとりましても、浦和は住みやすい街だと感じます。

それから、私が主催する浦和でのイベント参加者は教育に関心が高い方が多く、街自体が文教都市という印象も強いですね。未来の教育について研究する私にとって、浦和は有益なフィードバックをいただける貴重なフィールドでもあります。

西原さん:私が運営している「学童保育ココカラKIDS」を利用しているご家庭においても、育児のために住環境の良い浦和区に引っ越して来られた方がたくさんいらっしゃいます。保護者の方も教育熱心で、子どものためにできることは可能な限りやってあげたい、いろいろな経験をさせてあげたいと思われている方が多い印象があります。

――STEM教育とは何でしょうか?

野村さん:昨今、科学技術はめざましい進展を遂げ、それにより社会も激しく変化し続けています。その中で、ひとりひとりが自分らしく生きるためにとても重要と考えるのがSTEM教育です。STEM教育には、子どもたちにとって「STEM的に見て考えることができる」ために2つのメッセージを込めています。

1つは、「学校の教科書で勉強することは、それを実生活や将来の仕事で使って初めて意味があるもの」ということです。

たとえば、「交通事故をゼロにする社会を創ろう」といったテーマで、未来の街づくりや自動運転自動車についての調査~実験を通して探求していくとします。そこでは、理科や算数の知識で自動運転自動車を試作したり、社会科や保健体育の知識で安全な道路や街並みのジオラマを作って実験してみたり。さまざまな分野からものごとを見て考えて、自分達が考える未来の街を追求していきます。

これが、「STEM的に見て考える」ことであり、子どもたちが社会に出たときに、問題解決をするうえできっと生かされることでしょう。

そして、もう1つは、これからの社会ではより一層、科学技術がとても重要な役割を果たすことになるので、「科学的にものごとを見て,考えることができる必要がある」ということです。

たとえば「鎌倉幕府が開かれたのは1192年」と教わったときに、ただ「そうなんだ」と思うのではなく、当時の人々がどのように生活していたのか、なぜその年と割り出せたのかなどに疑問を持つことが大事なのです。

地球温暖化を防ぐことを考えたとき、いま現在稼働している発電所と自然エネルギー発電所を作るために排出される「温暖化ガス」は、どちらが多いのか?実際の数字と照らし合わせて考えることも「STEM的に見て考える」ことに含まれる科学的数学的な考え方なのです。

——既存の教育方法との違いは何でしょうか?

野村さん:STEM教育は、「何を知っているのか」を重視するのではなく、「何ができるのか」を試すこと。そして、さらに「なぜそれは正しいと言えるのか」「なぜそれをする必要があるのか」などの理由が説明できることを重視する教育方法であり、これが1番の違いではないでしょうか。

――STEM教育の中でロボット作りやプログラミングをする意義は

野村さん:ロボット作るためには、あらゆる分野の見方や考え方を駆使する必要があります。先の「STEM教育とは?」でお話した通り、さまざまな視点からロボットの仕組みやプログラミングを考えることは、「STEM的にものごとを見て考える」力を育むことができると思います。

また、モノを作る面白さは、「モノは嘘をつかない」ということではないでしょうか?きちんと考えて作られたモノは、思い通りに動作するはずです。それを動かすことができた時の感動が知的好奇心を喚起し面白さに繋がってくるでしょう。

モノづくりは、明快に「自分は何ができるのか?」を証明してくれます。学校のテストや受験を気にしている子どもたちもいるかと思いますが、本当に気にしなければならないのはこの視点ではないでしょうか?

――西原さんは、STEM教育を学童保育に取り入れようと思ったのはなぜでしょうか?

西原さん:今の子どもたちは、インターネットで何でも答えを知ることができます。特に学校で教えてもらうことは自分ひとりでも学べることがほとんどです。ですから、これからの子どもたちには、人に教えてもらって学ぶのではなく、自分で調べる力や調べたことを自分の力として身に着け、昇華させ、アウトプットすることが求められると考えます。

そこで、IT技術を学ぶだけでなく、子どもたちの主体性や問題解決力を育てることができるSTEM教育に着目。野村先生とともに最先端のSTEM教育を実践しています。

――浦和の街はSTEM教育に注力していると感じますか?

野村さん:私もセンターの事業の一環としてお手伝いをさせていただいていますが、さいたま市は2021年度から市内の小中学校において、STEAMS(※)教育の推進を始めました。さいたま市が特色とするスポーツ分野も含め、さまざまな分野でSTEM的に見て考える力を育む活動を総合的な学習の時間を中心に市内全体で進めていくそうです。

それから、さいたま市立大宮国際中等教育学校では、STEM教育の考え方にもとづく先進的な教育課程が準備されています。その一方で、浦和の街では古民家を再生してまちづくりを進めている人や、異分野の人たちが交わる居場所づくりをしている人など、STEM的にものごとを見て考える人たちがどんどん集っているように思います。

そのような浦和では、今後STEM教育は当たり前になってくるでしょう。

(※)STEMに加えてA=Art,S=Sportsを加えた言葉

――最後に今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

野村さん:STEM教育を推し進める者として、いま教育としてとても大事なことは、「STEM的にものごとを見て考える」という新たな視点を持った人間を、1人でも多く育てることだと感じています。

これからも新しい学童保育のあり方を追求する「学童保育ココカラKIDS」をはじめ、浦和の街や埼玉大学を中心に、子どもたちが幼い頃から「STEM的に見て考える」機会に出合える場を、世界に向けて増やしていきたいと思います。

西原さん:子どもたちには、学校や家庭ではできないような当施設の体験を通じて、未来を自分の力で切り拓く力を身に着けてもらいたいと願っています。そのためには、教育者である私たちも子どもたちと一緒に日々精進してまいります。

****

グローバルな視点での新時代のリーダーとなる子どもたちの成長を見守っていきたい——。
文教都市・浦和のSTEM教育のお話を伺い、子どもたちの未来に期待がふくらむばかりでした。

取材協力

(写真左)野村 泰朗さん/(写真右)西原 舞さん

野村 泰朗(のむらたいろう)さん

(埼玉大学教育学部心理・教育実践学講座准教授/同大学STEM教育研究センター代表)
日本のSTEM 教育における第一人者、ものづくりを通した「ロボット×人工知能=教育」の研究者。また、学校を始めとした教育現場の最前線にて実践的に活動を展開。
「知識や受験勉強に偏っている学校教育を見直し、より本質的な問題解決能力の育成」の必要性を感じ、2001 年より「ものづくり教育研究センター」を始動。その後、2007 年に「STEM 教育研究センター」と改め、STEM 的な考え方ができる教育者の育成とその方法論を研究し、今日に至る。
活動の一環として、同大学内で子どもと大学生が一緒になってロボットやゲームを作りながら学ぶ場を提供している。
http://neo.stem-edulab.org/

西原 舞(にしばらまい)さん

(株式会社ハコカラ執行役員/埼玉大学STEM教育研究センター監修「学童保育ココカラKIDS」運営責任者)
同施設を北浦和、西浦和、戸田の3拠点で展開。子どもたちの成長を促す多くの経験と環境を提供し、のびのびと自発的に物事に取り組める人間の育成に注力している。
http://hakokara.jp/

写真/織田桂子 取材・文・編集/山口瑠美子(ピースなじかん編集部)

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