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今どきの住まい・暮らし

2023.03.06

切り絵作家・YUYAさんの 「大好きな物に囲まれて、住みながら仕事をする」

―私のとっておきのおうち時間-

切り絵作家・YUYAさんが手がける作品は、かわいらしいモチーフとカラフルな色使いで表現された世界観が特徴で、見る人の多くを自然と笑顔にさせてしまう魅力があります。今回はYUYAさんの作品が生まれる場所である「Atelier FOLK(アトリエ・フォーク)」にお伺いし、とっておきのおうち時間をお聞きしました。

INDEX

【1】限られたスペースを有効活用する工夫の数々

日当たりのよい2階の仕事場。YUYAさんは限られたスペースを有効に使うべく、収納や家具で工夫を凝らす。また仕事とプライベートは時間で区切るように心掛け、休みの日は展示会や古本屋などを覗いてリフレッシュするという。

「アトリエ・フォーク」は、 YUYAさんとパン・お菓子研究家である奥さまのスパロウ圭子さんがともに立ち上げた「アートと食」の工房です。2016年に築30年の一戸建てを購入してフルリノベーションし、ご自宅を兼ねた活動拠点としてスタートしました。

「僕が個展を開いたり、今はお休み中ですが、妻が料理教室を開いたりと、お客さまを迎える場を作りたかったんです。ようやく見つけたこの家はいい意味で“普通”。癖がない分、リノベーションもしやすかったですね」

YUYAさんは、バラバラに切り取ったモチーフを色や形、構成を考えて組み合わせ、ひとつの切り絵作品へと仕上げていく。どこか懐かしく、モダンさも兼ね備えた作風は、見る人をほっこりとさせるやさしさに満ちている。

とはいえ、決して広い家ではないため、YUYAさんは快適に過ごすためにさまざまな工夫を凝らしました。そのひとつが収納です。

「床面積は限られているので、本棚は床置きにせず、壁付けにしてもらいました。あと2階のリビングと仕事場の天井は抜いて、天井裏のスペースも収納として有効的に使えるようにしています。また、既製品の家具はこの家には大きすぎるので、机や下駄箱などは家のサイズ感に合わせてDIYしました」

画像(左):既製の家具では大きすぎるため、YUYAさん自ら手作りしたデスク。引き出しは古道具店で購入したもの。

画像(右):壁付けされた本棚にはYUYAさんが影響を受けたデザイン関連の書籍が並ぶ。「僕が切り絵を始めたきっかけは、1960年代のグラフィックデザインの中にあった切り絵のイラストでした。これなら僕にもできるかなと思って独学で始めました」。

ほかにも、金具などはエッジの強いデザインは避け、内装は木の色と白い壁でシンプルに仕上げたり、ディスプレイ用の棚を多く取り付けるなど工夫しました。

【2】時間をかけて集めたコレクションは目の届く場所へ

10年に渡って蒐集してきた民芸品がずらりと並ぶ3階の屋根裏部屋。ご夫婦の好みはほぼ同じだそうで、「それが蒐集に拍車をかけているかも(笑)」と話すYUYAさん。

天井を抜いたことで開放感も得られた2階の仕事場は日当たりもよく、YUYAさんがもっとも長くいる場所だそう。そのデスクの近くには、ご夫妻のお気に入りの民芸品が空間を賑やかに彩っています。

画像(左):仕事場の壁面には、YUYAさんと圭子さんのお気に入りや最近購入した民芸品が並ぶ。

画像(右):こちらはメキシコの民芸品。「どこか愛嬌のある表情やフォルムに惹かれるんです」。

「もともと家で仕事することが前提だったので、僕の場合、家は作品が生まれる場所でもあるわけです。だから、家としてくつろげることはもちろん、仕事場としてもくつろげることを意識して、自分の好きな物に囲まれた空間にしたいと思いました。また僕は昔からデザイナーのイームズが好きで、彼の家が民芸品をたくさん飾っていて、そういう中で暮らすことに憧れもありました。だから、僕たちの活動拠点となる場に、民芸やフォークアートを連想させる『フォーク』という言葉を入れたのも、僕の中で自分の好きな家のイメージにイームズハウスがあったからかも知れません」

仕事場にある民芸品はごく一部で、3階の屋根裏部屋にはご夫妻が10年に渡って蒐集してきた数多くの民芸品が飾られていました。最初は器から始まったご夫妻の“民芸の旅”も、世田谷のリサイクルショップでたまたま目にした新潟の「三角だるま」をきっかけに立体物へと興味の対象は広がり、今では日本国内に留まらず、世界各国の民芸品を蒐集するほどに。YUYAさんが、今、一番のお気に入りだと話すメキシコの民芸品「生命の木」は、時代とともに落ち着いた味わい深さも魅力なのだといいます。

画像(左):器から立体物へ。民芸品の興味の幅が広がるきっかけとなった新潟の「三角だるま」。

画像(右):独特のフォルムが目を引くメキシコの燭台「生命の木」。もともとは鮮やかな色使いが特徴だが、こちらは時代とともに落ち着いた色合いに。

「僕が民芸品に惹かれるのは、かわいらしさの中にシュールさがあるような“愛嬌”があり、なおかつ、造形的におもしろいと思うから。これらの民芸品の表情や色合い、形、動物の描き方など、僕自身の作品のインスピレーションになることもありますね」

【3】大好きな物に囲まれ、仕事も暮らしもシームレスに

コンパクトにまとめられた2階のリビング。休日はここで音楽を聴いたり、本を読んだりするのもお気に入りの時間だとか。

ひとつの空間で生活と仕事という2つの機能を叶えるため、YUYAさんが心がけていることをうかがうと、「空間でオンとオフを線引きしない」ことだといいます。

「今となっては、住みながら仕事をしているのか、仕事をしながら住んでいるのか、もうわからないのですが(笑)。ただひとついえるのは、僕の場合は空間でオンとオフの線引きはせず、時間で切り替えるようにしています。『この時間まで』と割り切って仕事をすることが、長く続けていくコツなのかなと思っています」

画像(左):1階にはパン・お菓子研究家である圭子さんの要望で業務用キッチンを設置。使い勝手を考慮して、食器棚はすべてオープンに。

画像(右):民芸品に興味を持つきっかけは器だったそう。独特の風合いが魅力の民芸の器は「和洋どちらの料理にもなじむので使いやすい」と圭子さん。

そんなYUYAさんも休憩中にお菓子を食べたり、休日の朝に音楽を聴いたり、奥さまとテーブルを囲んで食事をしたりと些細な時間に幸せを感じています。

「最近は妻と一緒に夕飯の準備をするようになり、なおさら、夕食の時間が楽しみになりました。一日の終わりという感じでいいですね」

今は夕方5時には仕事を切り上げて、奥さまと一緒に食事の準備をするそう。「自分で作った料理だから、なおさら、食べるのが楽しみなんです」とYUYAさん。

YUYAさんにとって、大好きな物にあふれた空間で奥さまと暮らし、くつろぎながら仕事をすることが理想の家の形であり、もっともお気に入りの時間でもあるようです。YUYAさんと圭子さんの夢が形となったこの家は、おふたりの飾らない人柄そのもののように温かく、居心地のよさに包まれていました。

住宅展示場では、間取りやインテリアコーディネートといったさまざまな工夫を実際に体験することができます。ぜひ、お近くの住宅展示場で理想の住まいの実現に向けた第一歩を踏み出してみてください。

取材協力

切り絵/イラスト/デザイン Atelier FOLK(アトリエ・フォーク)代表 YUYAさん

武蔵野美術大学で建築を学び、建築設計事務所で4年間勤務後、会社員時代に独学で自由に切り絵を始める。「人がにっこりする絵」をテーマに、2007年から切り絵作家として活動を開始。ライフワークとして個展「ちょっきんきりえ展」を開催し、作品を発表。シンプルでありながら、温かな手の痕跡が残るモダンな作風が特徴で、生活空間で楽しんでもらえる身近なアートを目指している。雑誌・書籍・CDのカヴァーなどのイラストやアートワーク、パッケージ、フライヤー、シンボルやロゴのデザイン、ポストカードや手ぬぐいなど商品のデザインまで幅広く手がける。2016年、東京・中野で 「アトリエ・フォーク」 として独立し、パン・お菓子研究家の妻・スパロウ圭子とともに運営している。

【リンク】
ホームページ http://chokkin-kirie.com/
Instagram  instagram.com/yuya_chokkin_kirie

編集・執筆:石倉 夏枝
撮影:小島 沙緒理

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コラムはネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。本記事に掲載しているテキスト及び画像の無断転載を禁じます。

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