2025.05.08
コンクリート住宅のメリット・デメリットとは?

モダンで高級なイメージのあるコンクリート造住宅ですが、内外装までコンクリートを押し出した家の数は限られます。根強い人気がありながら、大きく普及しない理由はコストの問題だけでしょうか。
本記事では、コンクリート住宅のメリット・デメリットを解説します。施工事例などもご紹介しますので、家づくりのための参考にしてください。
住宅の建物構造については、大きく以下に分類されています。

この中でRC造(鉄筋コンクリート造)とSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の2つがコンクリート住宅です。戸建て住宅はRC造で、SRCの構造はマンションに用いられます。
以下は現在の住まいの工法、あるいはこれから家づくりをする際にどの工法がいいかを質問した結果です。鉄筋コンクリート工法は約3分の1という結果となっています。

鉄筋コンクリートで建築する住宅は、1cm以上の太さの鉄筋を格子状に組んだ周りを型枠で囲み、コンクリートを流し込んで成形する工程で建てていきます。
鉄筋の「熱に弱いが引っ張る力が強い」特徴と、コンクリートの「熱に強く引っ張る力に対して弱い」特徴を補完し合い、強度のある建物を構成するという知恵です。
INDEX
コンクリートの家のデメリットとは?

まずはコンクリート住宅のデメリットからまとめます。「寒い」「湿気がこもる」というイメージは本当なのでしょうか。
①外気の温度変化の影響を受けやすい
熱を伝えやすいコンクリートは冷気や暑熱を取り込みやすいなど、外気温変化の影響を受けやすい傾向があります。夏場は太陽熱を建物が蓄えるため、マンションの高層階は夜になっても温度が下がりにくくなりがちです。
コンクリートの風合いを生かした内外装にしたい場合、壁の中・柱の間の断熱をしっかり行うようにしましょう。外断熱で性能アップを図る場合は、壁が厚くなり建築コストが上昇する可能性があります。
以前は「寒かった」という後悔のコメントも見られましたが、近年では断熱の技術が進み、鉄筋コンクリート造の家の快適性も大きく向上しました。
②カビが発生しやすい
吸水性の高いコンクリートは、水分を吸いこんで蓄えるため、湿気やカビの管理が難しくなることがあります。
普段開け締めが少ない納戸や使用頻度の低い和室、湿気のこもりやすい地下室などは、定期的な風通しをしない場合、カビの発生が心配です。換気や除湿の対策を行うようにしましょう。
外装は、コンクリートの風合いを損なわないようにしながらコーティングを行って水分の侵入を防ぐことも行います。
表面にひび割れや傷が生じた場合、中の水分が凍結してひびが広がる場合もあるので、要注意です。
③費用が高い
木造などの構造よりもコンクリート造の建物の建築費が高くなる理由は、建材の値段だけが原因ではありません。
現場施工の場合はコンクリートの乾燥待ちや天候に工程が左右されやすいため、工期が長引くことで施工・監理ほかの費用がかさみます。建物の重量が重い分、建物の基礎や仮設も頑丈にする必要があり、場合によっては地盤改良や杭を入れる工事も必要となるのです。
ただし、大手メーカーの採用する「プレキャスト」工法=工場生産した部材を現場に運搬して組み立てる方式では天候にあまり左右されず、品質も安定した施工が可能となりました。
現場でコンクリート打ちをしない分、作業員の稼働も少なく済むため、人件費も削減できます。
しかし、工事現場でコンクリートを打つ「現場打ち」の工法では、規格外のデザインも自由につくれるというメリットは見逃せません。
コンクリートの家のメリットとは?

コンクリートの丈夫さと造形の自由さを生かした建物は、「コストをかけた価値があった」といえる良さがあります。コンクリート住宅のメリットをご確認ください。
①耐久性・遮音性が高い
「頑丈で静かな家」というのは、長きにわたって安心のもととなるでしょう。コンクリート造の住宅は地震や火災などの災害に強く、法定の耐用年数も以下のようにほかの構造の家に比べてとても長いです。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
コンクリート住宅 | 47年 |
木造住宅 | 22年 |
軽量鉄骨造住宅 ※厚さ3mmを超え、4mm以下 |
27年 |
長く住み続けられるうえ、築年数が経過すれば外壁や屋根の塗り替え、張り替えなどが必要となる木造住宅と比べて、メンテナンスも比較的軽めにすることも可能でしょう。(ただし長期にわたって放置した場合、修繕に多額の費用を要することもあります)
また、防音性・遮音性の高いコンクリート住宅は、近隣や屋内の生活音などが静かで、快適に過ごせます。子どもの騒がしさや趣味の音楽の音漏れが気になる人も安心でしょう。
音をはね返し、気密性も高いコンクリートは音を遮断するうえで有利なためです。重くて振動を伝えにくい点でも、遮音に有利な建材です。
しかし、同じ室内の音は反響してうるさく感じることもあるので、音のはね返りの調整を工夫する場合もあります。
②デザイン性が高い
コンクリート住宅がデザイン上で有利な理由は、施工時の造形の自由度が高いためです。
箱をランダムに積んだような形や、曲面を多用した外観を見かけることがありますが、コンクリートの施工の自由さならではでしょう。
また、その頑丈さから開口部を大きく取った構造が可能です。大きな窓と吹き抜けを組み合わせた開放感のあるリビングは、鉄筋コンクリート造やALC(発泡コンクリート)造のハウスメーカーが、TVコマーシャルなどでアピールするポイントです。
シンプルな造形や、こじんまりした空間も良いですが、柱や壁を入れることなく、大きなひとつながりの空間をつくることができるのは魅力でしょう。
さらに、現在こそシンプルでモダンな内外観の仕様は増えてきましたが、「コンクリート打ちっぱなし」は、過去から家づくりのデザインでは、あこがれの対象でした。
コンクリートの無機的な良さに木材や土壁などを組み合わせて、モダンなデザインに仕上げるのも良いでしょう。
コンクリートの家の施工事例

この項では、コンクリート住宅の良さを生かした施工事例をご紹介します。デザイン性や構造的な強さだけでなく、生活に密着したコンクリートの生かし方の事例もご覧ください。
外装デザインに凝った建物づくり

前項でのご説明のような、複雑な造形を実現させた外観の例です。大きな窓や、広々としたエントランスのため、周囲から浮いた感じにはならず、景観に溶け込んでいます。相応の費用は必要とするものの、満足感の高い家となるでしょう。
コンクリート造の家の良さは、このようなデザインの家がすぐ立ち消えになるのではなく、耐久性が高く長期間にわたって維持できる点にもあります。個性的なデザインも長く楽しめるでしょう。
築50年クラスの建物をまだ多く目にすることができる点からすると、長い目で見たコスト・パフォーマンスは良いといえるでしょう。
コンクリートの堅牢さと質感を生かしたリビング

コンクリート造の建物は内観においても、高級感・おしゃれさを発揮してくれます。大きな窓はさらに吹き抜けにすれば、開放感たっぷりのリビングとなるでしょう。
無機的でありながらシンプルで、こだわりも感じられるコンクリート壁面の質感は、うまく活用することで、おしゃれな内観づくりに役立ちます。
大きな玄関土間が実用的な使い勝手を生む

日常生活でも、コンクリートの良さを生かしたいものです。上記の間取りは玄関周辺にひとつながりの大きな土間を設けています。大きな2つのウッドデッキや家庭菜園も設け、屋外とのつながりを重視した家であることがうかがえます。
この間取りのような収納や通り土間のほか、最近ではキッチン部分も土間にして、機能性を高めた例も出てきました。
屋外の遊びや趣味、野外の農作業のあとも気軽に屋内に入り、汚れても掃除が簡単というコンクリート土間は、生活に密着した仕様としての魅力があります。
厳しい気候の季節もビルトインガレージで安心

ビルトインガレージを、コンクリート打ちで玄関土間とひとつながりにした間取りです。降雪が多い、気温が低い、台風や大雨の際など、通勤・通学・買い物帰りの車からじかに屋内に入れるありがたさを実感できるでしょう。
1階はLDKと寝室のみというコンパクトな構成ながら、土間収納やガレージ内の収納などもあり、機能的ですっきり暮らしやすいプランです。ガレージは悪天候でも汚れものに気を遣わずに作業や趣味が可能なスペースにもなります。
また、コンクリートではなくテラコッタタイルなどの床仕上げでしょうが、リビングのダウンフロアも薪ストーブを置いた半屋外のような空間です。
まとめ

コンクリート住宅のメリット・デメリットや、施工事例などを解説しました。
コンクリートのデメリットは建築技術の進歩で、かなり緩和されています。また、コンクリートを内外装でフルに使用した住宅でなくとも、一部に取り入れるなどでそのメリットを享受するのも良いでしょう。
住宅展示場で実際にその質感や機能性を確認してみてはいかがでしょうか。
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総合住宅展示場ハウジングステージ編集部
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