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住宅のマネーと制度

2021.03.09

死亡だけ?がん保障?疾病保障? 住宅ローンの団信はどれを選ぶ?

住宅ローンを借りる際は、原則として団体信用生命保険(以下、団信)に加入しなければなりません。団信に加入すると、ローンを借りた人が死亡した場合に保険金が支払われローン残高が0になるため、残された家族を守ることにつながります。団信の保険料は住宅ローンの金利に含まれていますが、最近では金利の上乗せや別途保険料を払うことで、がん保障や疾病保障などをつけることができるようになってきました。今回は住宅ローンの団信について解説します。

  1. 金利の上乗せや保険料を別途払うことでがん保障付団信や疾病保障付団信がつけられる
  2. 上乗せ保障の内容や保険料は金融機関によってまちまち、実際の返済額に置き換えて比較を

INDEX

がん保障付、疾病保障付の団信

団信はローンを借りた人が死亡した場合にローン残高が0になるというものですが、最近では、がんと診断されたら残高が0になるもの、三大疾病で所定の状態になったら残高が0になるものなど、「死亡」以外の保障を上乗せするものが増えてきました。がん保障や疾病保障をつける場合、保険料相当分として金利を上乗せするのが一般的です。図表1はA銀行のがん保障とB銀行の疾病保障をまとめたものですが、このように、がん保障をつける場合、金利が+0.2%程度、三大疾病保障では+0.3%程度になることが多いです(金融機関によって異なります)。

図表1:A銀行、B銀行のがん保障、疾病保障

A銀行の団信 保障内容 保険料
普通団信 死亡または所定の身体障害状態となった場合に残高0 金利に含まれる
がん保障付団信 普通団信の内容に加えて、がんと診断された場合に残高0 金利を0.2%上乗せ
B銀行の団信 保障内容 保険料
普通団信 死亡または所定の身体障害状態となった場合に残高0 金利に含まれる
八大疾病保障付団信 普通団信の内容に加えて
・がんと診断された場合
・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態が60日以上継続した場合に残高0
・上記以外の5疾病(糖尿病など)で就業不能状態が2カ月超継続した場合、毎月のローン返済額分を保障(最長10カ月)、同状態が12カ月超継続した場合は残高0など
金利を0.3%上乗せ

これらの保障をつけるかどうかは、具体的な返済額に置き換えて考えてみるとよいでしょう。たとえばA銀行の変動金利を利用するとして、普通団信のみの場合と、がん保障付団信をつける場合を比較すると図表2のようになります(借入額5000万円、35年返済、元利均等返済の場合)。

図表2:A銀行のがん保障付団信をつけた場合の返済額の違い

A銀行の団信 金利 毎月返済額 総返済額
普通団信 0.525% 130,345円 5475万円
4,480円 188万円

図表2の場合、毎月4,480円ほどの負担増、35年の総支払額では188万円の負担増ということになります。自分にとって、保障の内容がこの負担増に見合うものになっているかどうかで、保障をつけるべきかどうかを判断していくことになります。

なお夫婦でペアローンや連帯債務型のローンを組む場合には、夫婦どちらかが死亡した場合に両方のローン残高が0になる、「夫婦連生団信」という商品が用意されている場合もあります。たとえばフラット35では、金利を0.18%上乗せすると、夫婦連生団信(デュエット)に入ることができます。また最近では地震などの災害にあった場合にも保障が受けられるような団信も出てきています。

団信に関する最近の動向

がんや疾病に関する保障をつける場合、図表1のように金利が上乗せされる場合が多いですが、最近では金利上乗せではなく、保険料を別途払うタイプも増えてきました。保険料を別途払うタイプの場合、途中で保障を外すことができる、保険料の一部は介護医療保険料控除の対象とすることができる、というメリットがあります。

※逆に、金利を上乗せして保障をつける場合は、途中で保障を外すことはできず、介護医療保険料控除の対象にもなりません。

また、疾病保障の中には保険料の上乗せなしでつけられるものも一部の金融機関にはあります。ある銀行の保障をまとめたのが図表3です。

図表3:C銀行の疾病保障

C銀行の団信 保障内容 保険料
普通団信 死亡または所定の身体障害状態となった場合に残高0 金利に含まれる
全疾病保障付団信 疾病や障害で所定の就業不能状態になった場合、毎月の返済額分を保障、就業不能状態が12ケ月超継続した場合、残高0 金利上乗せなし

たとえば「がん」に関してみると、B銀行の八大疾病保障(図表1)では「がんと診断されたらローン残高が0になる」のに対し、図表3のC銀行の全疾病保障では「がんであっても、就労不能状態が12ケ月超続いてはじめて残高が0になる」となります。金利上乗せなしの分C銀行の方が保障は薄くなっていると言えるでしょう。

最近では、地方銀行を中心にがん保障(がん診断されたら残高が0円になる保障)を金利上乗せ0でつけられる、という銀行も多くなってきました。ある地方銀行(以下D銀行)は、借入時に40歳未満だとがん保障を金利上乗せなしでつけられます(借入時に40歳以上だと金利は+0.2%)。変動金利にがん保障をつけたとして、A銀行(図表1、2)とD銀行を比較すると図表4のようになります(借入額5000万円、35年返済、元利均等返済の場合)。

図表4:D銀行とA銀行のがん保障付団信の比較

  金利 毎月返済額 総返済額
D銀行がん保障付団信 0.775%金利上乗せなし 135,960円 5710万円
A銀行がん保障付団信 0.725%※0.525%+0.2% 134,825円 5663万円

D銀行は金利上乗せなしといっても金利は0.775%、一方A銀行ではがん保障自体は金利を0.2%上乗せする必要がありますが元々の金利が0.525%と低いため、両者の比較ではA銀行を選んだ方が得ということになります。

がん保障付団信や疾病保障付団信に関しては、保障内容や保険料は各金融機関によって異なります。比較が難しくなってきていますが、図表2や4のように実際の返済額に置き換え、どれくらい負担が増えるのか、その負担に見合った保障内容なのか、を考えてみることで比較、検討はしやすくなるでしょう。

今回は住宅ローンの団信について解説しました。最近は住宅ローン金利も限界と言っていいレベルまで低くなってきており、金利の低さよりも、団信の上乗せ保障の内容で差別化しようとする動きもあるように感じられます。今後も団信の中身は進化していく可能性があります。最新の情報は住宅展示場にてハウスメーカーに確認してみることをおすすめします。

※2021年2月10日時点の情報を基にしています。

執筆・情報提供:アルトゥルFP事務所 代表

ファイナンシャルプランナーCFP® 井上光章

独立系FPとして、住宅購入時の資金計画や住宅ローンのコンサルティングを行なう。注文住宅を建てる人向けの住宅ローンコンサルティングが得意。豊富な相談実績を基にした、マイホーム購入時の資金計画や住宅ローンで失敗しない秘訣をお伝えします。

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