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仕事とプライベートを両立させるコツは すき間時間の有効活用とメリハリ

コラージュとは、新聞や雑誌、写真などさまざまな素材を貼り合わせ、一つの作品として表現する現代絵画の技法のことです。コラージュ・アーティストとして活躍する井上陽子さんの作品は、コラージュの元となる素材から手を加えていき、大胆さと繊細さが絶妙にバランスのとれた唯一無二の世界観を作り出しています。今回は、独特の世界観で多くの人を魅了している井上さんのアトリエ兼ご自宅にお伺いし、ライフスタイルへのこだわりをお聞きしました。

INDEX

【1】この家は自分たちが育てていくという初めての感覚

アトリエの壁は井上さん自らペイント。隣の公園の木々の緑とのコントラストが美しく、とても居心地のいい空間に仕上がっています。「通りに面しているので、お店と勘違いする人も時々いますね(笑)」と井上さん。

井上さんのアトリエ兼ご自宅は、東京郊外の住宅街の一角にあります。1階に井上さんのアトリエがあり、2階がご主人との住居スペースになっています。アトリエは、前の住人たちがギャラリーや美容院として使用していたらしく、天井が高く開放的。大きな窓には隣の公園の緑が美しく映え、とても居心地のいい空間です。

この場所に元々あったという大きなカウンターは撤去せず、細々とした絵具や筆などの道具類の収納に活用しました。

井上さんがこの家に越してきたのは、新型コロナウイルスの感染が拡大し、初めて緊急事態宣言が出された2020年春のこと。予定していた個展も軒並み中止となってしまい、井上さんはぽっかりと空いた時間を利用して、アトリエの壁や家具などの塗装に勤しみました。

「個展などが中止となり、気分も凹みがちでしたが、黙々と作業することで気分も紛れました。そのときにふと思ったのですが、家は体の延長のようなものだということ。ペンキを塗ったり、家具を磨く作業が、まるで自分を磨いているような、そんな感覚がありました。私は常々“自分を育てるのは環境”と思っているのですが、この家も同じように自分たちで育てていくのかなぁと、これまで感じたことのない気持ちになりました」

写真左)居住スペースとアトリエをつなぐドア(写真中央)を新たに設置しました。アトリエを独立させたことで、仕事にメリハリも生まれたと井上さんはいいます。写真右)真っ白な外壁にブルーの外部ドアが映える、アトリエの入口。

この家を選んだ理由は、長い時間をかけて、ようやく見つけたこの家は、アトリエとして使えるスペースがあったことと、隣に大きな公園があったことだと話す井上さん。前の家にもアトリエはあったそうですが、住居と完全に分離していなかったため、創作中に出る紙の屑や汚れた画材が気になり、ストレスを感じていたことも。また、当時は井上さんご自身がアーティストとしての転換期を迎えていたときで、もっとのびのびと創作に勤しめる場所を求めていました。長い時間をかけて、ようやく見つけたこの家は、アーティスト・井上陽子の第二章の始まりにはぴったりな家だったのです。

「この家に引っ越してから、アトリエや家の窓から隣の公園の景色を眺めることが日課になりました。とても気持ちいいんです」

【2】生活を豊かにするために時間を効率よく使う

色使いや構図、素材の配分などが絶妙なバランスで構成された井上さんの作品は、とても力強く大胆で美しい。今は国内外で個展を開くほか、インテリアショップなどで作品を販売しています。アーティストとして転換期を迎えた井上さんは、創作活動を続ける一方、大学で心理学を学び、ご自身のセカンドステージがより豊かになるように挑戦しています。

井上さんが手がけるコラージュ作品は、ただ素材を貼り合わせるのではなく、自ら筆を持ち、感情の赴くままに絵や文字を描き、色を重ね、ときには金属を削ることもあります。私たちが想像するよりも遥か多くの工程を経て、1枚の作品を仕上げています。

「コラージュは即興です。画角の中に絵を描いたら、そこに紙を合わせるのか、別の色を合わせていくのか。切って貼った後にサンドペーパーでこすったり。私の中では1枚の絵を描くことと変わらないですね」

作品に取り掛かるとテーブルの上はあっという間に絵具や紙、筆などで埋め尽くされます。作品が仕上がるまではほぼこの状態だそうですが、完全に独立したアトリエなので気になりません。

これまで個展前ともなれば夜中まで作業を続け、アトリエ内は足の踏み場もなかったそうですが、この家に引っ越してからは仕事にメリハリが生まれてきたといいます。今は夕方6時に仕事を切り上げるため、それまでの限られた時間内で作業を終えられるように、仕事の質を上げることを意識するようにもなったそう。

「夜遅くまで仕事をしなくなったので、その時間に絵のための本を読んだり、アイデアを考えたりしています。私のアイデアの源は日常のあらゆるもの、たとえば、映画や音楽、食べ物、旅行などからヒントを得ることが多いので、そういったインスピレーションを育む時間がとても大事なのです。なかでも、旅は私の創作活動に大きな影響を与えてくれるものですね」

目に入るものすべてが創作活動の源になっていると話す井上さん。アトリエに置かれた小物の一つひとつにも井上さんのセンスが光ります。

でも、今は海外渡航が難しい状況なので、井上さんは公園を散歩したり、2階リビングの隣にある洋室でご主人と一緒に映画を観たり、アーティストとして活動する友人たちとお茶をしたりと、日常生活の中で作品のインスピレーションを探しています。

それでは、井上さんは仕事とプライベートをどう切り分けているのでしょうか?

「もともと仕事とプライベートの境目があってないようなものでした。私は飽きっぽいこともあって(笑)、仕事の合間に家事をすることが苦ではないんです。だから、仕事に飽きたら、ご飯の準備をしたり、美味しい物を食べたり。料理の合間にも英会話の勉強もしますし。早くのんびりしたいので(笑)、時間を無駄にしないようにしています」

【3】お互いに依存し過ぎない、それが夫婦の暗黙のルール

「家にテレビがあるとずっと観ちゃって仕事にならない(笑)」と話す井上さん。テレビの代わりに、リビングにプロジェクターとシアターを置いてシアタールームに。映画を観た後は、ご主人とお互いの感想を話し合うなど楽しい会話が続きます。

ご主人と結婚されて11年が経つという井上さん。今も変わらず、ご夫婦の仲がいいのは、井上さんとご主人の間で暗黙のルールがあるから。それは相手に依存しないことです。

「以前、主人に『他人は変えられないから』っていわれたことがあるんです。確かに、私も自分を変えるつもりもないし、変えようとも思わない。だから、主人は私の仕事に関しては何もいいませんし、私も主人の趣味に関しては口を挟まないようにしています。よっぽどのことがない限り(笑)。私たちは、相手に無理に合わせるのではなく、それぞれの得意分野でお互いを支えている感じですね」

スクリーンは本棚に取り付けているので、スペース入らず。本棚にはご主人の本やDVDなどのコレクションを中心に置いています。

最近のアート人気の高まりもあって、井上さんの作品は個展や展示会だけでなく、インテリアショップなどでも手にすることができます。ほかにも、これまでに制作したコラージュ作品が、ノートやCDジャケット、着物やテキスタイルなどに形を変えて、さらに多くの人たちの元へコラージュの魅力を届けています。

ご自宅では、創作のヒントになる本を読んだり、作品のアイデアを考えたり。井上さんはこの時間をとても大切にしています。

「インテリアショップでの販売は、井上陽子という作家ありきで選ぶのではなく、この作品を家に飾りたい、空間に合うアートが欲しいという視点で選んでくれるので、とても嬉しいです。アートがあるだけで、生活が豊かになると感じる人が増えているからでしょうね。またコラージュが1枚の布になって、洋服へと仕立てられていったのは、私自身もすごく新鮮でしたし、面白かったですね」

リビングの一角にはご夫妻共有の書斎スペースが。デスクは北欧のビンテージ家具で、ご主人が選んだものです。新居での生活も慣れてきたので、今はデスクの背面の壁に飾るアートを思案中なのだとか。

最後にこの家をこれからどうしていきたい?と尋ねると、井上さんは「少しずつ手を加えながら、自分にとって心地いい場を追求していきたい」と答えてくれました。そのために苦手な掃除を克服したり、すき間時間に晩御飯の魚を下ろしたり、チキンを煮込んだり。仕事も家事も気負わず、今できることを自分のペースで楽しんでいきたいと話します。

井上さんが初めての感覚を味わったと話すこの家は、アーティスト・井上陽子の第二章の舞台でもあるとともに、井上さんとご主人の人生のセカンドステージを彩る場所となります。これから井上さんとご主人が少しずつ手を加えていくことで、ますます心身ともにフィットするような住まいへと変化していくことでしょう。

監修・情報提供

井上陽子

【DATA】
家族構成:夫婦
居住形態:戸建て(築30年)

【プロフィール】
コラージュ・アーティスト。1975年滋賀県生まれ。東京在住。京都造形芸術大学芸術学部美術科洋画コース卒業。紙とドローイングを組み合わせた作品は、偶発性や自然に生まれるリズムを大事にすることで生まれる。著書に『写真と紙でつくるコラージュ』『コラージュ図案帖』(どちらも雷鳥社)や『コラージュのおくりもの』(パイインターナショナル)がある。ほかにも、書籍の表紙や雑誌、雑貨やCDジャケットなどにも作品を多数提供している。2022年春、10年ぶりとなる作品集が「主婦の友社」から刊行予定。

【リンク】
ホームページ  http://www.craft-log.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/atelier.craft_log/

編集・執筆:石倉 夏枝
撮影:大崎 晶子
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