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家づくりの雑学

2024.03.19

地盤改良工事とは?種類別のメリット・デメリット・費用を紹介

家を建てる地盤への調査や対策が不十分だと、あとで沈下が起きるなどのトラブルとなる場合があります。本記事では、地盤改良工事とはどのようなものか、主流の3つの工法について具体的な方法や特徴、費用などをご紹介します。

INDEX

地盤改良工事とは何か?

住宅を建てる土地の地盤が弱い場合、住宅の基礎部分の地盤を適切な状態に改良し、建物を安全に支えるための地盤改良(補強)工事をおこないます。

地盤が弱いと建築後に時間が経過することで地盤沈下が起こったり、建物が倒壊したりするリスクがあります。また、耐震性能の高い家を建てても支える地盤が弱いと、建物が激しい揺れにさらされて歪んだり、土地の液状化で沈み込んだりする可能性があるでしょう。

したがって、適切な改良工事は欠かせません。

地盤改良の前にまず、地盤調査をおこないます。

地盤改良が必要かどうかや、どんな種類の改良が必要かを事前に確認するのが地盤調査です。これまで法律で義務化されていなかった地盤調査も、後述の住宅瑕疵担保履行法の施行以降は、施工会社の保険の申し込みに必要となったため、現在基本的に地盤調査は必須となっています。

地盤調査は一戸建ての場合ほとんどがSWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)をおこないます。住宅のプランにしたがい建物の四隅と中央の5か所の強度を調査する方法です。

先端がスクリュー状になっている鉄の棒を地面に立て、おもりの負荷を加えて25cmまで貫入する重さを記録します。得られたおもりの重量などから地盤の強度(N値)を算出します。

N値は数字が大きいほど強度があり、一般的な一戸建てでN値が3以上あり、5以上が理想とされています。SWS試験調査費用は5万円ほどです。
建物の面積あたりの重量が重い場合は、ボーリング調査をおこなう場合もあり、費用は25~35万円かかります。

地盤調査とともにチェックされるのが地中埋没物です。建物基礎、利用していない井戸や浄化槽、瓦、コンクリートガラ、岩などのほか、土壌汚染につながる医療廃棄物や廃液などが見つかる場合もあります。

これらは建物の建築や健康な暮らしを妨げるもので、売主の方の契約不適合責任となります。契約前によく確認をおこないましょう。

地盤改良工事の3つの方法

では地盤調査の結果で、地盤改良が必要になった場合に、具体的にどんな方法で強度を高めるのでしょうか。方法はおもに以下の3つです。

  1. 1. 表層改良工法
  2. 2. 柱状改良工法
  3. 3. 小口径鋼管杭工法

表層改良工法

表層改良工法は、地表から固い地盤までが比較的浅い場合におこなわれる工法です。深さ2mほどまで土を掘り下げながら、土と強固材を混ぜ合わせて地盤を強固にします。固化剤はセメント系のものを用いて土と混ぜたあと、締め固めて強度を高めます。

柱状改良工法

固い地盤までの深さが2m以上あるなど、表層改良工法で強度を出すのが難しい地盤の場合は柱状改良工法で施工します。

柱状改良工法はコンクリートの柱を複数本注入して地盤を補強する方法です。敷地の家屋を建築する部分に、碁盤の目のように柱を注入していきます。一戸建てのほかに自重の重いビルやマンションなどでも多く用いられています。

固い地盤の支持層まで打ち込む方法のほか、一戸建ての場合は深さ4mほど柱をつくって、強度を確保する場合も多いです。

小口径鋼管杭工法

小口径鋼管杭工法は、柱状改良工法と同じ要領で柱をつくって施工しますが、コンクリートの柱ではなく鋼管を使用します。

地中の30mまでの地盤補強が可能で、地中深くにある固い地盤に鋼管の杭を打ち、上に建てる建物を安定させます。1~2日程度と短い工期です。

地盤改良工事が必要かどうかの条件

地盤改良工事が必要かどうかの判断は、以下の2つの条件から決められることが多いです。

  1. 1. 地耐力(地面が建物を支える強度)が20~30KN/㎡以下=軟弱地盤と判断された場合
  2. 2. 敷地とその周辺が埋め立て地、盛り土の造成、過去に陥没があった、液状化や不同沈下の可能性などの情報がある場合

地盤調査の結果だけではなく、敷地周辺に関する過去の履歴などの情報を総合的にチェックしたうえで、地盤改良工事の必要性を判断します。

建築基準法の改正と品確法の制定

以前は地盤調査せずに住宅を建築できましたが、地盤の状態を考慮せずに建築すると、不同沈下などが起き、欠陥住宅の増加が問題となりました。

平成12年に建築基準法の改正があり、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)も制定されました。上記の法律の適用によって現在では地盤調査がほぼ不可欠です。

建築基準法では、建築物の基礎について地盤の沈下または変形に対して構造耐力上安全なものとするのを求めています。

また、品確法では、新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を10年間義務化する点や「住宅性能表示制度」などを定めています。また、瑕疵担保履行法では瑕疵担保責任を全うするため、新築の場合は建築業者に住宅瑕疵保険加入による補償の資力確保が義務付けられました。

では、最初から地盤改良が不要な土地を探す方法はあるでしょうか。

自治体のハザードマップによる液状化のリスクや土地の調査結果を参考にできる場合がありますし、周辺住民の方に、これまでの状況を聞く方法もあります。

ただし、土地の強度は100mの距離で変わっている場合があり、さらに同じ敷地内でも掘り返したあとなどは強度が低下します。やはり地質調査と地盤改良工事をおこなうのがおすすめです。

地盤改良工事のメリット・デメリット

地盤改良工事の3つの工法はそれぞれの特徴があり、施工するのに向いている土地が異なります。以下でその違いをご説明します。

表層改良工法

メリット

表層改良工法は改良の深度が浅い場合は比較的リーズナブルな価格で、小型の重機でも施工が可能です。また、地中にコンクリートや石などが混入したままでも施工ができる点もメリットといえるでしょう。

デメリット

傾斜の大きな土地での施工が難しい場合があり、地盤改良面よりも地下水の水位が高く、コンクリートの乾きが困難な場合は施工できません。

また、施工者のスキルが仕上がりに出るため、実績によって仕上がりの強度が変わる場合があります。

向いている土地

表層改良工法に向いている土地は勾配が少なく、地下水位が地盤改良面よりも高くない土地です。しっかりした地盤までの深さが浅く、2mほどで届く場合も、表層改良工法が適します。

柱状改良工法

メリット

柱状改良工法も、比較的費用のかからない地盤改良工法といえます。また、柱自体が強度を生むため、支持層となる強固な地盤に届かなくても施工できる場合がある点もメリットでしょう。

デメリット

特定の地盤では、土の成分からセメントがうまく固まらない固化不良が発生するケースがあります。このデメリットは表層改良工法でも同じです。

また、施工後は地盤の原状回復が難しい点にも注意しましょう。将来的に土地を売りたいが、住宅地目的以外に利用される可能性がある場合、改良体を撤去するために費用がかかる点で、売買が不利となる場合があります。

柱状改良工法で施工した上に建てた建物の解体後に別の建物を施工する際は、やはり改良体の撤去の検討が必要になる点も要注意です。

施工の際に、狭小地や高低差のある土地での資材や什器の搬入が難しいケースがあります。

向いている土地

柱状改良工法は、深さのある軟弱な地盤で、不同沈下の可能性がある場合に向いています。将来にわたって住み続け、地盤の改良体の撤去を考えない場合にも適しているでしょう。

小口径鋼管杭工法

メリット

小口径鋼管杭工法のメリットは、施工後の地盤強度が他の工法に比べて高い点でしょう。3階建てなどの、重量のある建物にも対応できる点も特徴です。

また、柱状改良よりも小さい重機でも対応でき、その点では施工する土地を選びません。

デメリット

小口径鋼管杭工法は、鋼管の届く支持層の地盤がない場合は施工できません。また、工事中の騒音や振動が大きい場合があり、近隣への配慮が必要でしょう。

費用面では同じ条件で施工した場合、柱状改良工法より高額になる傾向があります。また、新しい盛土造成地など圧密沈下の大きい場所では、建物や鋼管は沈下しないまま周囲の地盤だけが下がる「杭の抜け上がり」が起こるのも注意点です。

向いている土地

表層改良や柱状改良では対応できないような深い深度の施工が必要なケースや、ある程度狭く、かつ支持層がある土地に適しています。

地盤改良工事の規模・工期・費用

次に3種の工法の工事規模、工期、費用の目安をご説明します。

表層改良工法

適した建物の規模は一戸建てレベルで、工期は対応する土地の広さに左右されますが、1~2日と短期間で済みます。

一棟あたりの費用の目安は地域や広さ・改良の深度などによって違いが出ますが、一般的な戸建て住宅で一棟百~百数十万円程度です。

柱状改良工法

建物の規模は一般的な戸建て住宅に多く用いられ、工期の目安は、改良杭の数が30本程度のケースで2~3日です。

一棟あたりの費用の目安は施工の地域や改良杭の本数、杭の長さにより異なりますが、一般的な戸建て住宅で一棟あたり数十万~数百万円程度です。

小口径鋼管杭工法

工事の対象となる建物の規模は、一般的な戸建て住宅にも用いられ、工期はほとんどのケースで1~2日です。

一棟あたりの費用の目安は施工の地域、杭の本数、杭の長さなどで変わりますが、一般的な戸建て住宅一棟あたりで、数十万~数百万円程度です。

工法 規模 工期 予算の相場
表層改良工法 戸建て住宅・中小規模 1~2日 百~百数十万円
柱状改良工法 戸建て住宅~集合住宅 2~3日 数十万~数百万円
小口径鋼管杭工法 戸建て住宅 1~2日 数十万~数百万円

地盤改良工事会社の選び方のポイント

地盤改良工事を施工会社に依頼する場合は、以下の3つの点を確認しながら依頼先を決めましょう。不動産会社や住宅の施工会社経由での依頼となる場合も、確認しておきます。

  • ● 施工例などが明示されている
  • ● 事前説明や報告書の発行がある
  • ● 残土処理費用の事前説明

施工例などが明示されている

可能であれば、Webサイトで施工例や依頼者の声などが確認できるとよいでしょう。過去に実際におこなわれた地盤改良工事の内容をチェックし、知っておければ安心です。

事前説明や報告書の発行

施工会社は建築に関しての専門家ですが、任せきりにはせずに見積もりから工事完了までの各過程も知っておきましょう。とくに大切なのは施工前の事前説明と、施工後に発行される工事の報告書です。

残土処理費用の事前説明

工事によって出る残土の扱いも、事前に明確にしておきましょう。残土処理も施工する会社に依頼する場合が多く、費用は施主の負担となりますが、費用面でリーズナブルか、残土の撤去と建物の施工の兼ね合いに問題はないかを確認するのがよいです。

以下は地盤調査や改良工事に対する施主の意識調査です。とくに気にしないという意見は1割に満たないのが分かります。

まとめ

地盤改良の工事とはどのようなものか、主流の3つの工法について具体的な方法や特徴、費用などをご紹介しました。

地盤は目で見て分かりにくい土中の問題であるうえ、専門知識がない場合に数値上の理解が難しくはあります。しかし関心を持ち、分からない点は質問するなどして、施主として関心があるという姿勢を持つのが大切ではないでしょうか。

執筆・情報提供

滋野 陽造

保有資格:宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士。
マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。
実務経験をもとに、不動産の賃貸業・売却・購入、暮らしの法令などのジャンルで記事の執筆を行う。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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