2025.05.12
ユニット工法とは何?プレハブ工法との違いやメリット、デメリットを徹底解説

ユニット工法という建築方法をご存知でしょうか。仮設の事務所などを想像する方もおられるかもしれません。住まいの建築にも普及してきたユニットで組み立てる建物は、品質が安定していてコストも下げられる反面、建てたい人を選ぶ工法でもあります。
本記事では、ユニット工法とは何か、プレハブ工法との違いやそのメリット、デメリットなどを解説しますので、家づくりを考える参考にしてください。
INDEX
ユニット工法とは?

まず、ユニット工法の概要と特徴についてご説明します。ユニット工法は、低コスト住宅にだけ用いられているわけではありません。
ユニット工法の概要
ユニット工法とは、あらかじめ設計されたプランをもとに建物をいくつかのユニットに分け、工場生産したユニットを現場に運んで組み合わせて建築する工法です。簡易的な建物だけでなく、本格的な住宅でも採用され、その合理性から普及が進んでいます。
一般的に以下の流れが建築のプロセスです。
- ● 工場でユニットを製作する
- ● 大型トラックで建築現場へ納品する
- ● クレーンを使ってユニットを繋ぎ合わせ、組み立てる
ユニット工法はプレハブ工法の一種である
ユニット工法は、大枠ではプレハブ工法の一種に分類されます。プレハブは古くから一般の住宅用の工法としても発展してきました。
1970年代では、やや近未来の雰囲気もありながら、建築に手間をかけない簡素な家という印象でしたが、近年ではほかの工法とあまり外見上の区別はできません。
プレハブとは、従来の建築方法が建材を搬入して現場で組み立てるのに対し、多くの部分でプレファブリケーションという手法を適用して作られた建築のことです。(prefabrication=あらかじめ製作すること)
あえてユニット工法とプレハブ工法の違いを挙げると、プレハブでの部材の工場生産比率をさらに進めて、箱型の部屋まで作りこんだのがユニット工法ということができるでしょう。
国土交通省の建築着工統計によれば、国内の新築戸建て住宅の工法別割合で、プレハブ系とツーバイフォーはともに全体の1割程度で、現状では全体の約7~8割を在来工法が占めています。2024年 時点でのプレハブ住宅の着工数は、93,077棟、ツーバイフォー住宅は 95,095棟でした。
出典:令和6年 建築着工統計調査報告|国土交通省
ユニット工法で使用される素材
ユニット工法は構造部分に使用される素材によって、「木質系ユニット工法」と「鉄骨系ユニット工法」などに分けられています。
木質系のユニット工法は、木質系の素材を使用し、防腐やシロアリ防止の処理を行った部材やパネルによって構成した工法です。
鉄骨系のユニット工法は、鉄骨の枠組みで作られたユニットを使用します。鉄骨ユニット工法はさらに2つに分類され、柱・梁などを軽量形鋼で構成したところに壁・床パネルを張る「軸組方式」と、外壁パネル自体で構造耐力を持たせる「パネル方式」があります。
ユニット工法のメリットとは?

ユニット工法のメリットを、さらに詳しくご説明します。合理的なだけではないメリットもあるのが、ユニット工法です。
①広い空間を作りやすい
ユニット工法はパネル方式を除き、柱と梁で建物を支え、外力に対抗する構造のため、大空間・大きな開口部を実現しやすくなっています。
ユニット工法に多く使用される「鉄骨ラーメン構造」は、鉄骨の柱や梁を溶接して構成し、高層ビルなどにも使われるのと同じです。
広々として、吹き抜けや大きな窓を持つリビングを実現したい場合に有利となるため、検討の価値があるでしょう。
②品質が安定している
工場で生産されるユニットは、品質が安定しています。建材から現場で組み立てる場合、天候や職人の力量、工程監理などに建物の出来が左右される可能性は、否定ができません。
建物の大部分=全体の8~9割の作業を工場で機械生産するため、そのような個体差は生じにくくできます。
また、耐震性や耐久性なども、均一の商品としてテストを行っている結果、誤差の少ない性能を発揮しやすくなるでしょう。
③工期が短い
ユニット工法は工期が短いうえに、現場作業が少ないことから工期の狂いが生じにくいのが特徴です。
ユニットの製作作業は約3~4か月を要するものの、現場での組み立ては1日で完了できるため、天候に左右されにくく、人件費のカットにもつながります。(ユニット完成後、完工までに職人の作業あり)
入居予定日に変更が出にくいのはありがたい点となるでしょう。
④耐震性・耐久性に優れている
とくに前述の鉄骨ラーメン構造の場合、地震に対する性能はとても優れています。ラーメン構造は、柱と梁が溶接で一体化されており、金物やボルトで接合するほかの方式よりも頑丈です。
また、箱型で構成されるユニットは地震の揺れに対して均一に力がかかり、衝撃を吸収・分散できます。
これらは家が倒壊しにくい要因となるので、長く安心して住める家となるでしょう。
ユニット工法のデメリットとは?

続いて、ユニット工法のデメリットです。家づくりにこだわりのある人には、やや障壁があるといえるでしょう。
①間取りに制限がある
ユニットを工場で組み立てるため、ある程度の規格に沿った間取りやデザインからプランを選択することになります。ユニットの単位は例えば15~45 cm刻みほどです。
また、途中で間取りの変更はできません。したがって細かい間取りの仕様にこだわりたい人には向かないことになります。
しかし各メーカーさまざまな商品が準備されているため、「食わず嫌い」ではなく、見学してみるのも良いでしょう。
②施工できない土地がある
施工に大型トラックやクレーン車の出入りが前提となるため、建てられる土地に制限があります。
また、クレーンで吊って設置するため、電線がある場所などは作業困難な場合があり、どこにでも建築できるというわけではありません。
都市部で立地の良い狭小地にユニット工法の家を作りたいと思っても、車両や重機が入れないであきらめざるを得ないケースがあると考えられます。土地の広さや接道はあらかじめ考慮に入れておきましょう。
③リフォームしにくい
木造軸組工法では自由に変更が可能な間取りも、思うようにいかないことが。壁や柱を取り払うと強度が変わってしまうため、将来リフォームやリノベーションがしたいときに、制約が出る場合があります。
また、可能な場合でも、地元のリフォーム業者などではなく構造を正しく把握している建築メーカーに依頼することになり、割高となることも考えられるでしょう。
ただし、ユニットを追加する増築リフォームは可能です。
④建築費用が高い
現場作業が少なく人件費についてはコストダウンできるのですが、全体での建築費の比較では、費用は割高となりがちです。
鉄骨ユニット工法では、木材にと比較した鉄の弱点(断熱性や錆び)をカバーするために、高機能な部材が必要となることで、材料費が高額となる傾向があるでしょう。
ただし、その分木造に比べて耐震性や耐久性で有利な点もあることになります。
⑤外観や内装の自由度が低い
外観・内装のデザインも、箱を組み合わせた形が基本になるため、「好みに合わない」という場合もあるでしょう。
規格化されたユニットであるため、デザインや素材を決まったものから選択する形になります。外装・内装ともに木造の工法と比べると選べるバリエーションは少なくなり、こだわりのある方は満足できない可能性も。
ユニット工法以外の工法の種類

この項では、ユニット工法以外の各種工法を、ユニット工法と比較しながら解説します。
木造軸組工法(在来工法)

木造軸組工法は木の柱や梁で骨組みを構成し、斜めに筋交いを入れて強度を上げたところに壁や床を作ります。日本の新築戸建て住宅のうち7~8割を占めており、選べる施工業者も数多いです。
柱や梁といった「線」で支えることから、同じ木造のユニット工法やツーバイフォー工法に比べて、イメージ通りの間取りやデザインを作りやすいでしょう。お部屋の仕切り方も柔軟に検討できます。
耐震性や断熱性、気密度などの住宅性能を上げるのには工夫が必要で、構造上ツーバイフォーやプレハブのほうが向いているといえるでしょう。
木造枠組壁式工法(2×4工法)

木造軸組工法についでシェアが高いのが、2×4(ツーバイフォー)工法です。2インチ×4インチの角材と合板で作ったパネルを床や壁、天井に組み合わせ、建物を「面」で支えます。
ユニット工法ほどではありませんが、木造軸組工法と比較した場合工期は短めで、職人によるばらつきも少ないのがメリットです。
反面、ユニット工法同様で、規格があるため間取りの自由度が低いというデメリットも。
パネル工法

パネル工法は、軸組工法+ツーバイフォー工法を合わせた形で組み立てる工法です。まず現場で縦横の骨組みを鉄骨や木材で作り、そこに工場で生産したパネルの壁面を組み合わせて建築します。
骨組み以外の、工場生産する部分は品質にばらつきが少なく、短工期で建設できますが、ユニット工法ほど合理化が進んでいません。狭小地での作業難易度はユニットの場合と同程度と考えられます。
鉄骨軸組工法

鉄骨の軸組工法は構造体に鉄骨を使う以外は、木造軸組工法のように柱や梁などの「線」で支える点は共通した工法です。
戸建て住宅で鉄骨軸組工法を採用する場合、主に厚さ6mm未満の「軽量鉄骨」が使われます。大空間を作りやすい反面、木造に比べると前述の理由から建設コストは高めとなります。
シロアリの心配は少ないですが、鉄骨は熱で曲がってしまい、水分にも弱いため、防火や防サビには施工上の配慮が必要です。
RC在来工法

いわゆる鉄筋コンクリート造の住宅のことです。マンションだけでなく、戸建て住宅でも使われることがあります。
コンクリートは圧倒的に火に強いうえ、遮音性や断熱性能が高いため、静かで快適な住まいが実現可能です。デメリットは、防湿と室内の温度維持に工夫が必要な点でしょう。
建設費用は高めですが、耐久性が高く家が長持ちするため、イニシャルコストよりも長期的に安定した資産価値を重視する場合、選択肢となります。
まとめ

ユニット工法とは何か、プレハブ工法との違いやそのメリット、デメリットなどを解説しました。
在来工法とどちらが良いか、メリット・デメリットは建てたい人それぞれが何を重視するかで分かれるところです。
例えばメーカーで同じセキスイでも考え方が異なり、積水ハウスは自由設計・デザインなどを重視した在来工法、セキスイハイムはコスパや住宅性能を重視してユニット工法を活用 しているというのが現状といえます。(2社は現在完全な別会社)
家族の希望をまとめる中で住まいに何を求めるかを明らかにし、どちらを選択するかは性能比較や実際の建物に触れて検討しましょう。
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総合住宅展示場ハウジングステージ編集部
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