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家づくりの雑学

2026.07.17

段差のない家のメリットは?知っておくべきデメリットや設計のコツを徹底解説

高齢化社会の進行につれて、バリアフリーは暮らしにおける大きなテーマとなってきました。

内閣府の発表で、自宅内での転倒事故は年間で約200件にのぼります。これは2005年とやや古い数字のため、現在はもっと多いと考えられるでしょう。

本記事では、段差のない家のメリットはどのようなものか、知っておくべきデメリットや設計のコツを解説します。家族が安心できる住宅の設計のために、参考にしてください。

「段差・危険・転倒」などを意識するのは、高齢の方に対してだけではありません。

以下は、「子育て中の住まいで困ったことは?」というテーマのアンケート集計です。階段や段差での転倒が、不安・困りごとの1位を占める要因となっています。

2026年 株式会社AZWAY調べ

INDEX

段差のない家の3つのデメリット

この項ではまず、段差を解消した家のデメリットについて、以下のような点を解説します。

  • ● 砂利・ホコリが室内に入り込みやすい
  • ● 湿度が高くなりやすい
  • ● メリハリのない空間になりやすい

段差なしには数多くのメリットがありますが、段差を設けたほうがメリットがあることも。視点を広げてみましょう。

砂利・ホコリが室内に入り込みやすい

玄関や土間などでは、本来は段差が砂ぼこりやホコリの侵入を防いでいます。

フラットな設計にするほど、この機能が失われるため、注意が必要なのです。

戸外とつながった設計のリビングなども同様です。掃除の回数を増やすなど、意識して対処しましょう。

湿度が高くなりやすい

高温多湿の日本では、床を高くして湿度対策としており、建築基準法でも、1階の木造床は地面から45cm以上の高さを確保することが決められています。

同様の理由で、玄関や玄関外のアプローチなどの段差が、地面から直接上がってくる湿気を防ぎ、床下の通気性を確保する設計となっていることがありました。

現在では木造以外にさまざまな構造が採用され、気密や断熱対策も多様となっていますが、この湿度対策については、設計段階で確認しておいたほうが良いでしょう。

メリハリのない空間になりやすい

玄関の上がり框(かまち)や、リビングの小上がりスペースの段差は、むしろ高齢の方における起居動作の助けになる場合があります。

腰掛けて靴を脱ぎ履きするほうが楽な人もいます。また、段差に座ってから小上がりの寝床に移るなどの動作も必要でしょう。

小上がりには以下のメリットも挙げられます。

  • ● 空間のメリハリを作れる
  • ● 子どもを寝かしつけて、見守りしやすい
  • ● 畳のくつろぎが味わえる
  • ● 下部に収納を設けられる

つまずきやすいような段差でなければ、利用したほうがいいケースもありそうです。

段差のない家の3つのメリット

段差のない家には、以下の代表的なメリットがあります。それぞれをご説明します。

  • ● 転倒のリスクを減らすことができる
  • ● 開放的な空間になる
  • ● 掃除がしやすくなる

転倒のリスクを減らすことができる

高齢化にともない、足腰の筋力低下でわずかな段差につまずきやすくなるものです。とくに現代は慢性的な運動不足から、筋力は意識して維持しない場合、比較的若いうちに失われる傾向にあります。

転倒による骨折などのケガは、寝たきりのきっかけになるリスクが大きいです。何気ないつまずきが人生を変えてしまうことがあるのです。

段差のない間取りは高齢者だけでなく、小さな子どもやペットに対しても安全をもたらすメリットがあります。

開放的な空間になる

段差のないシンプルなお部屋の内装は、空間を広く開放的に見せる効果があります。

近年家にあまり物を置かずに、ストレスを軽減する「ミニマリズム」という志向が広まっていますが、段差のないお部屋は、ミニマリズムと相性が良いといえるでしょう。

また、吹き抜けやアウトドアリビング、大きな間取りなど、近年のお部屋に対する開放感志向にもマッチすると考えられます。

掃除がしやすくなる

段差のない間取りはドアの敷居・引き戸のレールなどもなく、掃除機の使用やゴミ集めがとても楽になります。

お掃除ロボットもスムーズに稼働できるため、効率のいいお掃除が可能です。

段差のない家を設計する際のポイント

この項では暮らす人の観点から、段差のない家の設計ポイントをご紹介します。

①床材

床は「滑りやすさ」を意識して、配慮する必要があります。

とくに玄関アプローチや、浴室・トイレ・洗面所などの水回りは、濡れて滑りやすくなるリスクを避けたいもの。

床材を選ぶ際はデザインのほかに機能性を重視しましょう。滑りにくい加工がされたものを選べば安心です。きれいなタイルをあしらいたい場合も、壁面にしておくのが良いでしょう。

玄関は表面が滑らないタイルを、脱衣所やトイレは滑り止め加工のあるフローリングや床シートなどを使用します。

近年はシステムバスも滑らない床となってきていますが、選定の際に確認しておきましょう。

②引き戸

蝶番を使った開き戸は、開閉の際に身体を大きく動かす必要がありますが、引き戸の場合は動作もスライドだけなので小ぶりで、最近のものは少ない力で開閉が可能です。

また、引き戸は自重も軽く、指を挟んでしまったなどの際も、ケガが軽く済むことが多いといえます。

ドアの前のスペースを広く使え、通行時にも気を遣わないで済むのもメリットでしょう。

③通路幅や間口

床や廊下、居室の開口は段差がないだけでなく、十分な幅や間口が取られているかも、大切な要素です。

車椅子でのスムーズな移動も考慮に入れると、廊下の幅は最低90cm以上確保するのが望ましいとされています。

さらに、介助する人が横でサポートすることを想定すると、幅や間口は120〜150cmあると、安心して移動できるでしょう。

通常の暮らしを想定しても、一般的な幅より少し広めに設計しておくだけで、快適さには大きな違いが出ます。

家の設計は、限られたスペースでさまざまな要素を考慮する作業ですが、このような視点で間取りを考えることも大切なのです。

④手すり

トイレ、浴槽、廊下、階段など、動作の補助となる手すりは、段差をなくすこと同様に、転倒を防ぐのに効果的です。

足腰の弱った人は、身体を支えるのに耐えられないものにも無意識ですがりつこうとしてしまい、非常に危険です。

そのため、暮らしの中で「危ない」「ここで欲しい」という場所に手すりを設置すると安心でしょう。

予算や手間を考えて、検討のうえであとから付けるのでも構いません。むしろ後年本格的な追加は、介護保険・介護認定など段階のほうがお得にもなります。

ただし、新築の時点で壁面などに下地を入れておくことで、将来的にしっかりした取り付けが可能です。専門家に相談しながら計画してみましょう。

⑤寝室の広さ

近年、寝室はミニマムな広さの間取りが流行っていますが、将来のことを考えると、寝室は1階に設け、少し広めなのが理想となります。

将来は介護用のベッドを置いたり、車椅子で出入りしたりなども想定されるためです。介助者が準備や作業をするためのスペースも必要となるでしょう。

以下のような点も意識することが大切です。

  • ● 寝室とトイレは同じフロアか
  • ● 寝室からトイレまでスムーズに行き来できるか
  • ● ドアの開口幅は十分か

将来改めてリフォームの予算や手間が不要であれば、慣れた状態で長く快適に住み続けられるでしょう。

⑥玄関

通常玄関の上がり框に設ける段差をなくし、土間からリビングをフラットにしてしまうと、前述のデメリットはありますが、以下のように良い点もあります。

  • ● お部屋が広く見える
  • ● ベビーカーや車椅子もスムーズに出入りが可能

玄関の段差をなくす場合、外からの汚れが屋内に侵入しにくいように、以下のような対策を取りましょう。

  • ● 雨の吹き込みを防ぐように戸外に庇を設ける
  • ● 靴の汚れをしっかり落とせる玄関マットを準備する

戸外の玄関ドアまでのアプローチも、当初は階段でも、なだらかなスロープに改修できるように、事前に設計しておくのがおすすめです。スロープの角度は約4.76度以下にできると、車椅子やベビーカーを使っても1人で上り下りでき、理想的なスロープとなるでしょう。

以下にバリアフリーリフォームがうまくいかなかった例をご紹介します。せっかく意識して設計するのであれば、後悔は避けたいものです。

段差のない家の施工事例

この項では、建材や設備の観点から、段差を解消する施工事例をご紹介します。

事例①段差を最小限にするレール

最近は引き戸のレールも、数ミリ程度まで段差が低くなっている商品が増えています。敷居にはごく浅い溝が戸車を受ける構造になっており、凹凸は非常に少ないです。

浅い溝はゴミやホコリの影響を受けやすく、騒音や建て付け不良の原因となるため、定期的に清掃を行いましょう。

片開き戸で、引き戸の敷居に相当する部分を沓摺(くつずり)といいます。以前はドアを受け止めるように高さが設けられていた沓摺も、バリアフリーや換気の観点からごく低いか、沓摺自体を設けないドアが増えている傾向です。

事例②大きな開口部と吊り引き戸

引き戸にはさらに吊り引き戸といって、敷居自体がないタイプもあります。

開口部を大きく取り、吊り引き戸にすると、足腰が弱っても安全で、開放感あふれる空間が実現可能です。

吊り引き戸は動作音が床に響かないため、静かで落ち着いた生活にもつながるでしょう。

事例③玄関スロープ

戸外に出る部分では、家の基礎構造(前述の湿度対策)などの理由で、地面との高低差が生じます。このような高低差は、手すり付きのスロープで段差解消をはかると安心です。

階段の昇降段差は足腰が弱った人にとってはほんの数段でも、車椅子通行でなくとも、危険要素になりえます。

最初から施工しなくとも、将来的に設けられるように意識しておくと良いでしょう。

まとめ

段差のない家のメリットはどのようなものか、知っておくべきデメリットや、設計のコツを解説しました。

段差でメリハリを設けた空間設計をしたほうが、居心地の良い住まいになる場合もあるでしょう。しかし、生活の場である住宅は、小さい子どもや高齢の方でも安心して暮らせる場である必要があります。

全ての人にメリットのある段差のない家。検討してみてはいかがでしょうか。

執筆・情報提供

滋野 陽造

保有資格:宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

早稲田大卒。マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産賃貸業に従事。実務経験をもとに住まいづくり、不動産の売却・購入、暮らしの法令などのジャンルで記事の執筆を行う。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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