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今どきの住まい・暮らし

2019.07.24

知っているようで意外と知らない!「お盆」のあれこれ

 夏の帰省時期といえば、お盆休み。その「お盆」って、そもそも何でしょうか?ということで、今回は夏休みにちなんで、「お盆」のあれこれについて紹介します。

INDEX

なぜ、「お盆」は夏の行事なの?

四季がある日本には、「両分性」という時間の捉え方がありました。春、夏、秋、冬のサイクルを1セットとし、循環しながら年を重ねていくイメージです。

春の対極が秋、夏の対極が冬。田植えの春祭りに対し、収穫の秋祭りのように、対になっている季節では、似たような行事が行なわれています。

正月とは、戻ってきた年神様や家長の「生き御霊(いきみたま)」を祀る行事。そして、その半年後の夏に、もう一度戻ってくる先祖の霊を祀る行事が「お盆」です。

おめでたいことをたとえるときに、「盆と正月が一緒にやってきた」という言葉があるように、お正月とお盆は、日本人にとって1年のメインイベントとして考えられていたのです。

「お盆」の由来とはじまり

「お盆」の由来には、古くは西暦606年に記録が残る「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教行事が関係しています。

「盂蘭盆会」とは、お釈迦様の弟子のひとり、目連尊者(もくれんそんじゃ)が、亡き母が地獄に落ちていることを知り、その御霊を供養したことに由来した精霊を祀る行事です。

一方、日本は古来より、八百万の神を崇拝する神道の思想がベースにあり、先祖の霊を祀る「祖霊信仰」の歴史がありました。

そして、「祖霊信仰」と「盂蘭盆会」が結びついて、「お盆」となりました。

仏教が起源ではない?「お盆」は日本ならではの行事

「盂蘭盆会」が由来に関係し、今や仏教行事に取り入れられた形で行なわれている「お盆」ですが、実は、仏教が起源の行事ではないのです。

お供物を例にすると、仏教では殺生を忌み嫌うため、動物や魚の肉は取り入れませんが、神道では動物の血肉を嫌うことはなく、神饌(しんせん=神様へのお供物)にも獣肉や魚を用います。

では、「お盆」はというと、夏野菜のほかに生魚をお供えします。このことからも、仏教の行事ではなかったことが分かります。「お盆」とは、江戸時代以前にあった「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」の思想のもとで始まった日本独自の行事だったのです。

盆魚(イメージ)

東京と地方で「お盆」の時期が違うのはなぜ?

日本では江戸時代まで、月の満ち欠けをもとに割り出した旧暦(太陰暦)を用いており、日本人の時間感覚は、農業と結びついて1年のリズムをつくっていました。

「お盆」は、旧暦7月15日に行なわれていました。これは、現代の新暦でいう8月15日前後にあたります。この頃になると農作業も一段落。家族そろってゆっくり過ごせるため、農家の人々にとって「お盆」に適した時期でした。

やがて、明治時代に入ると、毎年変わる不定期な旧暦では外交などにおいて支障が出ることもしばしば。そのため、日本でも世界標準のユリウス暦(のちにグレゴリオ暦)を新暦として採用することになりました。

しかし、年中行事を旧暦の日にちのまま新暦に落とし込んでしまったため、「お盆」は1カ月早くなってしまうことに。

ところが、農業は佳境を迎え大忙しの時期。また、暑さが少し引いてくる初秋の季節が「お盆」というイメージだったこともあり、地方では新暦8月15日に行なうことにしました。

一方、商業都市の江戸では生活する上で特に支障がなかったため、新暦7月15日のまま行なわれていました。

こうして、今日の「お盆」は、東京で7月15日、地方で8月13日頃に行なわれるようになったのです。

「迎え盆」と「送り盆」

古来のやり方では「迎え盆」は、お墓を掃除し、盆花を摘み取るところからはじまります。次いで、仏壇の前に「盆棚」をつくり、ごちそうを供え、盆花や「精霊馬(しょうりょううま)」、ほおずき、燈籠を飾り、「迎え火」を焚いて先祖の霊を迎え入れます。

ちなみに、故人がはじめてこの世に戻ってくることを「初盆」といい、迷わないで戻って来られるように、家の外に高い柱を設けて提灯をつける「高提灯」で迎え入れます。

また、「お盆」は先祖の霊と一緒に、身寄りのない霊や怨霊などもこの世に戻って来ると考えられています。これらの霊を慰めるため、「盆棚」とは別に、家の外に「施餓鬼棚(せがきだな)」を設置し、米や野菜などをお供えします。この時期、寺院では施餓鬼法要を行なっています。

そして1週間ほど滞在した後、先祖の霊は精霊馬に乗ってあの世に帰っていきます。お盆の最終日の「送り盆」は、「送り火」を焚いて送り出します。

無縁仏のお供え物「水の子」(イメージ)

「きゅうり」や「なす」を飾る理由

精霊馬

割り箸などを用いて、きゅうりは「馬」、なすは「牛」に見立てて作るお供物を「精霊馬(しょうりょううま)」といいます。先祖の霊は、この「精霊馬」に乗ってこの世に戻り、あの世に帰っていくと考えられていて、早く走れる「馬」が迎えに行き、ゆったり歩く「牛」が送っていきます。

関東から東北地域では、まこも(ゴザの原料)でつくるところもあるようです。

今では都市部を中心に飾りつけは簡素化され、ホームセンターやスーパーなどで販売されている飾りつけセットを使う家庭も多いようですが、江戸時代においても、都市部の人々は、地方からやって来る農家による「盆市」や「ほおずき市」などで飾りつけ用具を購入していたようです。

 

お盆のお供えもの

作る工程で手間がかかり、塩や油を使用しているそうめんは、おいしくて栄養価のある高級な食べ物として供えられるようになりました。また、「盆魚」は、生臭物(なまぐさもの)を捧げることで生命力を高めようという考えにより、生の魚をお供えします。

ちなみに、対の行事にあたる正月にも「年越し魚」として生の新巻鮭などを捧げます。関東圏では先祖へのお供えものとして、水で洗った生米とさいの目に切ったきゅうりやなすを盆棚やお墓に供える地域もあります。

先祖へ捧げたお供ものは、のちに家族でいただくので、お盆はごちそうが食べられる行事でもあったのです。

夏の風物詩は「お盆」が関係している

京都の大文字送り火

霊魂は、火を捧げられると供養されていると感じ、喜ぶといいます。線香や送り火、迎え火、京都の「五山送り火」もそのことからきています。また、火をたくさん焚いて霊を供養しようとはじまったのが「花火」です。

そのほかにも、「盆踊り」は、迎えた先祖の霊を歌と踊りで慰める祭りであり、「怪談」や「肝だめし」は、さまざまな霊がこの世に訪れて霊が出現しやすいと考えられたことから、夏に行なわれるようになりました。

このように、夏の風物詩には「お盆」が関係していることが多いのです。

まとめ

知っているようで意外と知らない「お盆」のあれこれ、いかがでしたか?実家から離れて暮らしている兄弟やその家族が帰省する「お盆」。

普段はなかなかお墓参りや先祖供養ができずにいる人も、代々、家を守ってくれた先祖に感謝の気持ちを込めて供養するとともに、将来のことや家を守り継ぐことを考える機会にしてみてはいかがでしょうか?

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<お話を伺ったひと>

國學院大學 文学部 准教授 飯倉義之さん

【profile】
1975年千葉県生。専門は口承文芸学・民俗学。主著『日本怪異妖怪大事典』(共編著)ほか。
國學院大學WEBサイト


【information】
トークライブ・ホラー・アカデミア#8「ライトノベル・ライト文芸のなかの『怪異』―怪談文芸の行方―」に出演予定。
日時:2019年8月12日(月・祝)19:00~(開場18:30)
場所:新宿「Live Wire」

 
取材・文・編集/山口瑠美子(ピースなじかん編集部)

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