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今どきの住まい・暮らし

2021.03.01

ココロとカラダの健康を育む。 日本の木造住宅の魅力って?

日本で作られる住宅の中には、軽量鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC造)などもありますが、その多くは昔から親しまれてきた木造の住宅でしょう。ほかの工法と比べて、木造住宅は耐震性や耐火性などが劣ると思われがちですが、実際はそんなことはなく、木の特性を生かした優れた点も多く、また日本の気候風土にも適した工法といえます。そこで、今回は日本の木造住宅の魅力についてご紹介しましょう。

INDEX

木造住宅は湿気の多い日本に最適

国土の約7割を森林が占める日本では、古くからその豊富な森林資源とともに暮らし、その森林資源があったことで木造建築の技術が発展してきた歴史があります。長い間、木造住宅がほとんどを占めてきたのは、この優れた技術力の賜物であり、また木の優しく温かな風合いが日本人の感性に合っていたことが理由といえるでしょう。

その木造住宅の特性といえば、木材の調湿作用があげられます。木材は加工後も空気中の水分を吸収・放出する性質があるので、湿気の多い梅雨時は程よく水分を吸い、乾燥する冬の間は水分を放出します。海外で発展してきたRC造の場合は、木造のように湿気を吸わないので、室内に湿気が溜まりやすくなります。そのため乾燥した地域に適した工法といえます。

住宅はその土地の気候風土に適した工法というものがあり、それぞれ国、地域で住宅様式は発展してきました。日本の伝統的な木造住宅は、木材を建材として使うだけではなく、襖や障子、縁側や深い軒などを用いて風通しをよくし、湿気を逃す工夫が施されてきました。

実は地震や火災にも強い木造住宅

木造は地震や火事に弱いイメージがありますが、実際はそんなことはありません。
たとえば、杉の圧縮強度は同じ重さで比較すると鉄の4倍の引張強度、コンクリートの6倍の圧縮強度を備えており※、ほかの工法と比べても強いことがわかります。また、地震エネルギーは建物の重さに比例するので、この点でもRC造や鉄骨造と比べて軽い木造は有利となります。

※出典:北海道立林産試験場報告「木質材料と住宅(その1)」/小林裕昇

火災においては、木材は燃料になることから燃えやすい点はあるものの、メラメラと燃えやすいのは薄い合板で、20㎜程の厚手の合板や90㎜以上の梁や柱は実は燃えにくいのです。木材の燃焼スピードは0.6㎜/分程度なので、たとえ燃えても30分で18㎜ほど、両側から燃えても36㎜ほど。実際にその分を見込んだ厚みを施しておけば、安全に避難できる可能性は格段に高まります。財団法人日本住宅・木材技術センターが行なった実物大の木造住宅の燃焼実験によると、着火後55分間は2階への延焼はなかったという結果報告もあり、木造でも耐火性が高められることは実証されています。

また木材が丈夫である証として参考になるのは、世界遺産にも認定されている世界最古の木造建築物「法隆寺」でしょう。千葉工業大学の小原次郎教授の研究によると、法隆寺の柱、梁などの主要構造部に使用されているヒノキの圧縮強度や曲げ強度は、200年間増加し続け、その後少しずつ減少し、1300年経った現在でも創建時とほぼ同じ強度だといいます。さらに今後の1000年はその姿を維持し続けるといわれています。

心地よい暮らしを叶える木造住宅の魅力と注意点

私たち日本人の多くは、感覚的に木の家の心地よさを感じています。それは日本人の美意識や感性によるものもありますが、ほかの要因として「木目」も大きく影響しているようです。

東京工業大学の武者利光教授の研究によると、電気通信の際に生じる電波の揺れの1つである「1/fのゆらぎ」は、規則的なものと不規則的なものが程よく調和している状態のときこそ、人は心地よさを感じるという結論を導き出しました。この「1/fのゆらぎ」は自然界にも多く存在しています。たとえば、川のせせらぎや、鳥の鳴く声。そして、「木目」や「畳の目」なども「1/fのゆらぎ」にあたるそうです。私たちが木造住宅に感じる心地よさは化学的に実証されているのです。

また、海外の下足文化とは異なり、日本人は裸足などで床材に直接触れる機会が多い生活スタイルです。天然木のフローリングや木の下地は、コンクリートや石、タイルと比べて熱伝導率が低く、体温を奪いすぎることがないため、温かみを感じることができます。素材としてもやわらかく、足腰に与える負担が少ないのも木材の嬉しい特徴です。

このようにメリットが多い木造住宅にもデメリットはあります。ひとつはシロアリの被害を受けやすいこと。特に地面に近い基礎部分は被害を受けやすいので、ヒノキなどの防蟻効果の高い木材を使用するなど工夫が必要です。ほかにも、木材を組み上げる加工技術や緊結技術の良し悪しが住宅性能を左右するのですが、ここ最近は腕のいい大工が減少しているため、品質を確保するのが難しくなってきています。これらのデメリットについては、ハウスメーカーや工務店に対策方法をしっかり確認することが大切です。

住まいづくりにおいて工法選びはとても重要です。住宅展示場ではたくさんの木造住宅を体感することができますので、実際にどのような工夫が施されているのかをじっくりチェックしてみてください。そして、理想の住まいの実現に向けて、イメージを膨らませましょう。

執筆・情報提供

吉田美帆(一級建築士)

SUNIHA UNIHA 代表 吉田美帆
一級建築士/グリーンライフプロデューサー/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/LOHASスタイリスト(NPO法人ローハスクラブ認定/花育インストラクター(NPOフラワーハートセラピスト協会認定)武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て、2010年SUNIHA UNIHA(サニハユニハ)設立。
執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞。
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞

Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd

この記事はネクスト・アイズ(株)が提供しています。

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