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今どきの住まい・暮らし

2021.06.25

浦和Stories vol.4|「花まる学習会」高濱正伸先生インタビュー

将来、わが子をメシが食える魅力的な大人に育てよう!

浦和にゆかりのある方にご登場いただき、エピソードを通じて、上質で新しいものを生み出す「浦和」の街と人の魅力を伝えます。

INDEX

100年に一度の大変革期といわれる今。わが子に「生きる力」を身につけさせ、いかに「メシが食える大人」に育てるかが問われています。

そんな時代に今、注目されているのが、学習塾でありながら、25年以上前から野外体験を取り入れるなど、ほかとは一線を画す学習法を実践する「花まる学習会」。

浦和住宅展示場ミライズで開催された講演会後に、代表の高濱正伸先生をキャッチ。将来、子どもたちが魅力的な大人となり、しっかり自立するための育児について、お話を伺いました。

「外で主体的に遊んだ経験」で差がつく

――そもそも浦和エリアで塾を始めたきっかけは?

高濱:埼玉県の川口ふたば幼稚園の(現:川口ふたばこども園)園長・前園長先生と、キンダーというお泊り保育の会社でアルバイトをしているときに出会いました。私が今後やりたいことをお話ししたら、「うちでやりなさい」といっていただけました。川口市の2園でスタートさせた後、「浦和つくし幼稚園」で実施させていただくことになったのが、浦和エリアでの始まりです。

――当時、浦和エリアの教育リテラシーをどのように感じましたか?

高濱:蕨市でアルバイトをしていた際に、そこの塾長に「このあたりは、谷間。1〜2駅移動して、浦和に行くと偏差値が20は上がるよ」と言われて、そんなことはないだろうと思っていたけれど、実際に来てみたら、本当にそうでしたね。

どの親御さんもとても教育熱心で、中3になると、受験勉強をしっかりと始める文化が根づいていて、文教都市だなと実感しました。

――学習塾でありながら、根本的な人間教育に「野外体験」を取り入れた理由は?

高濱:何が学習能力の差につながるのか?ということについて、これまで僕なりにずっと研究してきました。ちゃんと物事に集中して取り組んだ経験総量はもちろん、ノーベル賞受賞者の多くは自然に囲まれた田舎で育っています。問題処理能力や地頭のよさ、人間力を育てるにしても、目的を持って取り組める野外体験しかないと考えました。

もともとうちでは、いい大学へ合格することではなく、「将来メシが食える大人に育てる」ところに焦点を当ててきました。今の若者に足りないものは、人間力や哲学、本質を見る目、どのように生きるかといった部分。

それらの大元には、「外で主体的に遊んだ経験」が必要ですが、今の子たちは足りていません。そのため、生きる力、自然教室も主軸に置いた塾を目指すようになりました。

――日頃の学習に加えて、野外体験を取り入れた結果、どんな効果が見えてきましたか?

高濱:うちでは毎年、トップ校への進学者を多く出していますが、もともとはどんな子でも受け入れて、受験する場合は、その子に合った学校を目指す指導をしています。そもそも我々の指標は成績ではなく、生き生きと毎日を生きられるようにするかという点に重きを置いてきました。

「メシが食える大人」に育てるための5つの力

――小学校低学年のうちに身につけるべき力として、「ことばの力」「自分で考える力」「思い浮かべる力」「試そうとする力」「やりぬく力」を提唱している理由を教えてください。

高濱:大学を目指す高校生を指導し、研究していくなかで、彼らの本質的な課題として、「補助線が浮かばない」「論理思考ができない」「立体の裏側が見えない」といった部分が見えてきました。それをもとに、『なぞぺー』という教材を作って指導しながら、それ以外の大切さも見えてきたかたちです。

たとえば『なぞぺー』には、補助線を思い浮かべてイマジネーションを鍛えるような内容があります。これを子どもの頃から楽しめるようなら、理系の素質があるといえるでしょう。これにかぎらず、子どもそれぞれの素質を見抜いて、強みを伸ばす指導をしています。

――たとえば、一度数学を嫌いになった子を好きにさせる方法はありますか?

高濱:数学を嫌いになる原因は、比較と人目です。たとえば同級生と比べられて、「⚪︎⚪︎ちゃんはもうかけ算もできるんだよ」という親のたったひと言が、本人のやる気をつぶしていることが多いように見受けられます。さらに「ちゃんとやりなさい」と親がたたみかけることで、ますます嫌いになるのです。

数学にかぎらず、子ども自身がちゃんと関心を持って自分のペースで学習を進められれば、早々嫌いにはなりません。主体的に取り組んで理解し、自分の中で「そうだったのか!」という気づきが快感に変わるのです。

ところが、親が「早く正解を出しなさい」「なんでできないの?」と迫れば迫るほど、好きになるわけがなく、どんどん嫌いになっていきます。

学習以外だと、思考力を鍛えるようなパズルや囲碁、将棋といったボードゲームを家族で楽しむのもおすすめです。

――それら「5つの力」が将来、大人になったときにどのようなかたちで役立つと考えていますか?

高濱:根本的な能力なので、どれも欠けてはいけないものです。たとえば、「ことばの力」を疎かにして育つと、文章読解ができないだけでなく、人に自分の考えを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったり、生きていく上での哲学も構築できなかったり、といった問題につながります。

小学校低学年を超えると、意識改革は難しい

――小学校低学年を超えて、ある程度育ちきってしまうと、意欲の低さは鍛えにくいということが、著書『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)にも書かれています。その理由を教えてください。

高濱:第二次性徴をはさんで、思春期に入ると人目を気にするし、いろいろな意味で、意識の壁にぶち当たります。何歳になっても、人には、悩み、相談、心の問題がつきものです。

「自分は頭がよくないから」などと思い込んで壁に当たってしまうのです。そうなると、なかなか考え方を変えるのは難しいですね。小学1年生くらいだと、柔軟で、落ち込んでいてもすぐに切り替えられるので、意識改革はしやすいです。

その点、6年生になると、落ち込む、妬む、恨む、といった感情が芽生えます。心の壁が一度できてしまうと、意識を変えることは難しくなります。

――そう思うと、小学校低学年くらいまでの親の声かけや励ましが、その子を大きく伸ばせるかどうかにおいて、とても重要ですね。

高濱:親はなるべく、遊んでいるときでも、勉強しているときでも、子ども達が熱中していることを止めないことが重要です。一見、ぼーっとしているように見える時間も、子どもなりに色々考えているので、主体性を大事にすることも大切ですね。

賢い子どもを育てるための理想的な環境と家づくり

――高濱先生が考える、賢い子どもが育つ環境づくりについて教えてください。

高濱:具体的には、母親の安心、安定が実はとても大事で、家庭内に笑い合える会話があるかどうか。たとえば、子どもがやらかしたことを笑い合えているかどうかです。

逆に、それに対して母親がイライラしているのは、母親自身が夫にねぎらってもらったり、共感したりしてもらえていないケースが多いです。だからこそ、経験のある先輩ママから、アドバイスをもらえるような環境を持つこともカギだなと思います。

――笑い合える家庭環境も含め、「笑いのセンスがある子どもは、将来見込みがある」と本にも書かれていますが、その理由を教えてください。

高濱:まずは、自立することが一番の目標。その次に、モテる人を目指してほしいと思っています。モテる人というのは、人から必要とされる人、一緒にいたいと思われる人。

将来、あらゆる場面で「あなたとずっと一緒にいたい」と思われるかどうか。そこで重要なのが、ユーモアセンス。世の中、正しいことを言えばいいわけではありません。笑いのセンスがある子は、人に対して愛情が持てる子でもあるのです。

――賢い子どもが育つ家づくりについてはいかがでしょうか?

高濱:たとえば、小さくても庭やベランダに植木があるような、憩いの場があるといいと思います。ポイントは、変化に気づく場所であること。四季折々の変化を眺めながら、「緑が増えたね」とか、「葉っぱが色づいてきたよ」といった親子の会話ができるようなリビングなどの空間があるといいですね。

それから肌感覚としても、小学校低学年までは、親の目が届くリビング学習が理想的だと思います。お母さんが「見てくれている」「わかってくれている」という「受容」や「共感」を感じながら、子どもは学習できます。

さらにいえば、ホワイトボードや黒板を置いて、今日あったことを図に描きながら説明できるものがあると、なお理想的。今日やるべきテーマを書いたり、親が子どもに勉強を教えたりできるようなコミュニケーションボードにもなります。

それから本がたくさんあるなかで育つのも、間違いなく子どもにとってプラスです。経済界やアスリート、アーティストなど、一流の人にインタビューすると、ほぼ例外なく、読書に没頭する時期がありました。家庭内に、本に対するポジティブな文化があることが望ましいですね。家族で、「この本が面白かったよ」などと共有し合える時間があると最高です。

――最後に、「ハウジングステージ」のパパ&ママ読者に向けて、子育てについての激励メッセージをお願いします。

高濱:今、この子がいるという喜びをぜひ満喫してください。子育てをしているときは、親にとって一番嬉しいとき。「子どもが存在してくれることがとても嬉しい」という親の気持ちが、子どもにも届くのです。

本質的な教育方針を標榜する塾の創始者である高濱先生から、先行きが見えにくいこれからの時代に向けて、迷える子育て世代にとって貴重なお話を聞くことができました。

ハウジングステージでは今後も、子育て世代にとって有用な催事をお届けします。イベント詳細は、こちらをチェックしてみてください。

PROFILE

「花まる学習会」代表/高濱正伸

1959年熊本県人吉市生まれ。 県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。
東京大学農学部を卒業し、東京大学大学院 農学系研究科修士課程修了。
「花まる学習会」代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長を務める。

編集協力/EDIT for FUTURE  撮影/駒田達哉

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