Find your new style!

会員番号:

家づくりの雑学

2021.01.06

家づくりで注目すべき「空気環境」vol.2 ハウスダストやシックハウスに有効な床材

前回の『家づくりで注目すべき「空気環境」』(https://www.housingstage.jp/topics/topics-25525)では、菌類の発生を抑える壁材・漆喰についてご紹介しましたが、空気を汚す要因はそれだけではありません。ほかにも埃やダニ、ダニの死骸やフン、皮膚、髪の毛などのハウスダスト、ホルムアルデヒドやトルエンなどの揮発性の化学物質があります。

汚れた空気環境で暮らすことは、アレルギーの発症だけでなく、シックハウス症候群を引き起こす可能性も。これらは一度でも発症してしまうとなかなか治りにくいため、しっかりと予防していくことが大切です。

そこで今回は、ハウスダストやシックハウス症候群の要因をはじめ、対策に効果的な床材の選び方についてご紹介します。
「家づくりで注目すべき「空気環境」(1)」はこちら

INDEX

アレルギーの原因物質となるハウスダストとは?

ハウスダストとは、その名の通り、目に見えにくい小さなごみ、家の塵(ちり)のことです。その塵を細かく見ていくと、その中には埃だけではなく、家に住むダニや、ダニの死骸やフン、花粉、人間の皮膚片やペットの毛、細菌、カビなどさまざまなものがあります。

ハウスダストは1㎜以下と非常に小さいため、空気中に舞い上がりやすく、吸い込むとアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎のほか、皮膚炎や気管支喘息などを引き起こすことがあります。

このハウスダストを減らすには、まず原因物質となるダニやカビなどの発生を抑えることです。ダニやカビなどは高温多湿を好む物資であるため、室温25度、湿度60%を超えると急激に発生しやすくなります。こまめな換気を心がけ、気温が高ければエアコンなどの空調設備で室温をコントロールしましょう。なお、エアコンは内部にカビが発生しやすいため、定期的にフィルターや内部を清掃してください。

ハウスダスト対策の基本は清掃です。家具の上や下、床の上にハウスダストは多く溜まっているので、こまめな拭き掃除や掃除機かけが大切。また布団もハウスダストの温床となるため、天日に干したり、掃除機をかけたりするとよいでしょう。

深刻な健康被害をもたらすシックハウス症候群

近年、建築業界における省エネルギー化が進み、高気密・高断熱の住宅が多くなりました。それに伴い、建材や家具などに使われた化学物質が室内空気の汚染要因となり、頭痛や吐き気、めまいや湿疹などのほか、目がチカチカするといった健康被害が発生するようになりました。症状の程度は個人によって異なりますが、この健康被害をシックハウス症候群と呼ぶようになりました。

このシックハウス症候群の対応策として、厚生労働省は2002年にシックハウスの原因といわれるVOCの13の物質に対して室内濃度指針を示しました。翌年にはVOC13物質の中でホルムアルデヒドとクロルピリホスについて規制する建築基準法を改正。ホルムアルデヒドの発散量における建材の等級区分を設けました。この等級区分は使用面積を制限するもので、もっとも発散量の少ない最上位クラス「F☆☆☆☆(エフ・フォースターと読みます)」の建材ならば、使用面積の制限なく使えます。

さらに、2009年には建材業界において4VOC物質の自主基準が設定され、2019年には厚生労働省が3VOC物質の室内濃度指針値を改定。その後も建材業界が進んで自主基準を改定するという流れが生まれています。

では、エフ・フォースターの建材を使えば化学物質が全く飛散しないのかというと、そういうわけではありません。あくまで5ug/㎡h以下という目安であって、ゼロではないからです。

私たちができる対策としては、エフ・フォースターの基準をクリアした建材を選ぶことはもちろん、それ以外のVOC物質についても注意することです。また、新築やリフォーム後は入居前だけではなく、住み始めてからもしっかり換気をしましょう。そのほか、家具などに使われている接着剤や塗料などの材料もチェックし、安全性の高いものを選ぶことが大切です。

ハウスダストやシックハウスに有効な床材の選び方

それでは、シックハウスやハウスダスト対策としてもっとも有効な床材の選び方をご紹介します。
ポイントは2つ。1つは化学物質がなるべく使われていないものを選ぶことです。もう1つは化学物質やハウスダストが舞いにくく、静電気が起きにくいものを選ぶとよいでしょう。

日本で多く採用される建材にフローリングがありますが、一般的なフローリングは表面材と下地の合板との間に多くの接着剤が使われています。最近は、表面材も本物の木材ではなく、木目柄のプリントシートが使われているケースもあり、その場合、静電気が発生しやすいというデメリットがあります。

フローリングでおすすめは無垢材。一般的なフローリングと比べてコストは若干アップしますが、化学物質の発生を促す接着剤などは極力使われず、無垢材ならではの質感と肌触りが心地よさをもたらします。また、最近は床暖房に対応できる無垢材のフローリングも増えているので、ハウスダストを空気中に舞いたたせずに暖をとれる床暖房と組み合わせてみるとよいでしょう。

フローリング以外の床材にはカーペットがあります。大きな特徴としては、床に落ちたハウスダストを空中に舞いあげないことです。実際にシックハウス症候群になった方の中には、カーペットの部屋では症状も軽くなるといわれています。

カーペットの素材は、天然のものから合成繊維までバリエーションは豊富ですが、一番のおすすめはウール製のカーペット。ほかの素材と比べて、化学物質の吸収が早く、再放出しないという特徴があります。また天然素材は100%土にかえるので、地球環境に配慮したエコロジカルの点でも魅力です。さらに、発火温度がかなり高いため、万が一、火災が起きても延焼しにくいというメリットも。ウール製のカーペットには「ウールマーク認証*」が付いていますので、購入時はマークの有無を確認しましょう。
*ウール製品の厳しい品質基準を満たした信頼のマーク

また、カーペットには裏面に接着剤を使用しているものもありますが、編み方によって接着剤をほとんど使用していないカーペットもあるので、気になる方はそちらを選ぶとよいでしょう。

住まいづくりにおいて素材選びはとても重要です。住宅展示場では実際にさまざまな床材の空間を体感することができますので、じっくりチェックしてみてください。そして、理想の住まいの実現に向けて、イメージを膨らませましょう。

執筆・情報提供

吉田美帆(一級建築士)

SUNIHA UNIHA 代表 吉田美帆
一級建築士/グリーンライフプロデューサー/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/LOHASスタイリスト(NPO法人ローハスクラブ認定/花育インストラクター(NPOフラワーハートセラピスト協会認定)武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て、2010年SUNIHA UNIHA(サニハユニハ)設立。
執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞。
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞

Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd

この記事はネクスト・アイズ(株)が提供しています。

この記事をシェアする

おすすめ記事 他の記事を見る

pagetop