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家づくりの雑学

2022.01.13

理想の二世帯同居の秘訣はバランスのとれた間取りにあるって本当?「部分共用型二世帯住宅」のすすめ

二世帯住宅といってもスタイルはさまざまあります。なかでも、たとえばキッチンやトイレは親と子で別々に設け、玄関、リビング、浴室など、一部を共用にするスタイルが「部分共用型二世帯住宅」。共用型は二世帯間のコミュニケーションを維持しながら、それぞれの独立性や生活リズムを尊重したスタイルです。大切なのは、どこを共用にするかをじっくり検討するのはもちろん、メリット・デメリットを知ること。理想の二世帯同居を実現させるための間取りの工夫について、一級建築士の川道恵子さんに教えていただきました。

INDEX

【1】部分共用型のメリット・デメリット

どこを共用にするか次第で、同居生活が上手くいくかどうかが決まるともいえます。具体的に計画するにあたっては、中途半端な二世帯住宅にならないように「共用する」「共用しない」空間を明確にして、メリット、デメリットをしっかり整理しておくことが大切です。

<メリット>
●近すぎず・遠すぎずだからこその適度なコミュニケーション

「お互いのプライバシーを確保しつつ、共用スペースでは適度なコミュニケーションが自然に生まれる」というのが、部分共用型の特徴でありメリットです。完全分離型にありがちな「コミュニケーション不足」や、反対に完全同居型で心配な「過干渉」「価値観の違いからくる衝突」といった、両方のデメリットを防ぎやすいスタイルです。
共働き夫婦の場合なら、その親は孫の面倒を見るというライフスタイルが自然と築けるかもしれませんね。
高齢の親との同居の場合は、ほどよい独立性で親の尊厳を守りながら、毎日同じ空間に居ることで体調や加齢による変化に気づきやすいことでしょう。また、お互いに目が届く安心感があります。

●建築コストや光熱費が抑えられる

世帯別で使用できるよう2カ所ずつ設けるスペースもあるので、すべてを共用にするよりもコストはかかりますが、完全分離型に比べると建築コストは抑えられます。水道、ガス、電気などの光熱費も、共用にすることで基本料金の重複は避けられます。

<デメリット>
●共用部分をめぐる遠慮や不満

共用部分の掃除、使用時間や使う頻度については、お互いの生活のリズムや価値観が異なると、遠慮や不満が生じやすくなるもの。浴室・洗面を共用にした場合、朝の時間に注意が必要です。たとえば一方は朝起きてから入浴したい生活リズム、もう一方は出かける身支度で洗面、整髪をしたい時間帯だと、毎朝が大変なことに。それ以外にも、食事の時間帯や趣味嗜好が異なると、どちらかに合わせなければならないこともあるでしょう。遠慮が蓄積してやがては不満につながります。

●経済的負担や家事負担の分担の問題

共用する水まわりについては、水道代などの費用を明確に分けることはできません。二世帯でどのように分担するのか、お互いに納得のいくルールを考える必要があります。共用部分については、食事の支度や後片づけなど、また消耗品の負担の仕方も、ともすればどちらかに負担が偏ってしまいがち。

●住まなくなったときの処分や活用のむずかしさ

万が一、将来どちらかの世帯が住まなくなった場合は、一世帯用にしては部屋数が多すぎたり、リビングが広すぎて持て余してしまったりすることも。かといって昔の下宿のようにそのままで他人を住まわせるわけにもいきません。また、両世帯が住まなくなって、売却や賃貸に出すことになると、一般的な住宅よりも水まわりが多く、部屋数が多いため、ターゲットが狭くなってしまい、結果、売りにくい、貸しにくいというリスクも。

【2】部分共用型で暮らしやすくする間取りのコツ

間取りを考えるにあたっては、共用部分、独立部分、それぞれでハード面の工夫が必要です。さらに、両世帯が心がけるべき心構えも。
ポイントは、距離感のメリハリとゆるさのバランス。また、将来的なことにも思いをはせておきましょう。

<部分共用型二世帯住宅 間取り例>

  • A 親と子の各プライベート空間を1階と2階に離すことで、プライバシーを確保する。
  • B リビングダイニングをL字型にして視線をゆるく遮ることで、両方の世帯がLDKに居ても、近すぎず離れずの過ごし方ができる。
  • C 将来、一部分を賃貸できるよう、床下に水廻り用の配管を計画しておくと、キッチン、浴室を増設しやすい。玄関ドアを設けたり、間仕切りを変えたりするための壁の撤去について、構造上問題がないように設計しておく。
  • D 間取りに回遊性があると、どちらかの世帯に来客があっても鉢合わせしない動線で、お互いに遠慮しない暮らしができる。
  • E 親世帯のゾーンは、キッチンや浴室に近い配置にして生活動線を短くする。
  • F 親世帯ゾーンと共用スペースは、庭からも行き来できる繋がりで孤立感を防ぐ工夫。

●プライベートと共用の各空間づくりにメリハリを

プライベート空間は、1階と2階に分けて設けると、空間的にも距離的にも分断させることができます。(図A) また、リビングダイニングを共用する場合、空間を広く確保することもおすすめですが、形状をL字型にしたり、サブリビングやサブダイニングを設けたりすることで、世帯別にゆるく集まれるようにしておくとよいでしょう。(図B) するとどちらかの世帯に来客があっても、お互いに遠慮したり、自分の部屋に引っ込んだりするむ必要がなくなるので、過ごしやすい空間が実現します。

●ライフステージの変化に合わせてリフォームしやすい可変性

長い人生では、さまざまな変化があるため、二世帯での暮らしができなくなることもあるかもしれません。そうなったときでもフレキシブルに対応できるよう、間取りの変更や設備工事を想定しておくのも大切なポイントです。たとえば、賃貸用に水まわりの増設工事ができるよう、あらかじめ、床下に配管までしておくと改修工事の負担を軽減できます。(図C)

●ルールはゆるく、お互いの違いを尊重し合う

お互いができるだけ嫌な思いをしないように、入浴や食事、掃除についての生活ルールを決めておくとよいでしょう。ただし、ルールに厳しくなりすぎると窮屈に感じて、辛くなったり、不満がたまったりします。ルール通りにできない場合は、声をかけて断りを入れるなどのちょっとした気遣いが大切。お互いおおらかな気持ちで受け入れてあげましょう。ルールがなかなか守れないなら、そもそもそのルールに無理があるということかもしれません。柔軟に話し合って変更していくことが、二世帯の暮らしを豊かにするコツです。
お互いの違いを尊重し合い、面白いと思えるようなら素敵ですね。

部分共用型は、計画段階で何をどう「共用する」か、二世帯でよく話し合うことがとても大切です。
そのためには具体的な二世帯住宅のモデルを見ることをおすすめします。住宅展示場のモデルハウスには、さまざまな間取りと暮らし方のヒントがたくさん詰まっています。
ぜひ、世帯同士で話し合うきっかけづくりや生活シーンの参考に、住宅展示場を訪ねてみてくださいね。

監修・情報提供

川道 恵子(一級建築士)

(株)住まいと街設計事務所 代表取締役
住宅メーカー設計部にて、戸建住宅の設計業務 デベロッパーにて、マンション等の企画・監理業務を経て設計事務所において不動産開発業務に携わる。
土地の活かし方、住宅の間取り提案等、幅広い実績多数。

Ⓒ2021 Next Eyes.co.Ltd

コラムはネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。
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