2024.11.18
戸建て二世帯住宅とは?メリットや注意点、補助金や税金が下がる仕組み解説
二世帯住宅にしようとお考えの場合、一般的に知られるメリットのほか、補助金や助成金の給付や税金の優遇を受けられることをご存じでしょうか。
本記事では、戸建ての二世帯住宅がどのようなものか、メリットや注意点、補助金の給付や税金が下がる仕組みなどについて解説します。二世帯住宅の建築、あるいは2世代・3世代同居に向けてのリフォームをお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
INDEX
二世帯住宅の種類とは
二世帯住宅は、2つの世帯の関わり方とそれに伴う家の構造によって、3種類に分類されています。それぞれの意味や違いについてご説明します。
1.完全同居型
完全同居型とは、構造上は普通の一つの家屋に、2家族が同居して暮らす形態です。お風呂やキッチンまで2家族で共用する、昔ながらの大家族のあり方といえます。
建築やリフォームの際は、設備を2つ設ける必要がなく、コストはもっともかからない方法です。また、最終的に一世帯となっても、部屋数がいくぶん多いだけで、そのまま住み続けることもできます。
2.部分共用型
部分共用型は玄関は一つでも、1階と2階でそれぞれバス・トイレ・キッチンなどを設けて生活スペースは分ける形態です。家屋の内部で2つの生活ゾーンはつながっているため、都合に合わせて一緒に過ごしたり、別の生活をしたりが可能です。
建築費用は設備の共用加減から、完全同居型と、後述する完全分離型の中間のコスト相場になります。
3.完全分離型
完全分離型の物件は内部でつながらず、玄関、水回りなどすべて独立している形態です。一つの建物ではありながら、メゾネットなどのように壁で隔てた別の住戸のため、行き来には玄関から訪問することが必要です。
建築や維持のコストはもっともかかりますが、一世帯分使わなくなったら賃貸併用住宅として貸し出し、家賃収入で住宅ローンの早期返済を目指すこともできます。
以下は二世帯住宅のタイプの割合に関するアンケート調査の結果です。もっとも多かったのは、半数を占める一部共有型です。
戸建ての二世帯住宅のメリット
あらためて二世帯住宅のメリットを整理すると、主に以下の点が挙げられます。
- ● 戸建て2戸分に比べて建築費も維持費も割安
- ● 光熱費なども割安にできる
- ● 親の体調などの状況を子が見守りやすい
- ● 親に孫の世話を頼みやすい
- ● 助成金の給付や各種税金の優遇がある
金銭的なメリットは、前述の二世帯の形態によって度合いが異なってきます。祖父母と孫の触れ合いは、お互いの世帯にとってメリットとなるでしょう。
このほか、建築費や維持費について、親世帯の協力を仰ぎやすい点も挙げられるでしょう。以下は、二世帯住宅の建築費の負担割合を調べた結果です。親世帯が多めに負担・全額負担を合わせた数が56%と、半数を超えます。
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二世帯住宅のおしゃれな間取り事例を紹介!費用相場も解説|住宅展示場のハウジングステージ
戸建ての二世帯住宅のデメリット【住宅別】
この項では、二世帯住宅のタイプ別のデメリットをご紹介します。3種類とも一長一短の要素を持つため、どのタイプを選ぶか検討する際に、下記の点は念頭に置いておきましょう。
「1日中気を遣うのは嫌だ」「プライバシーが欲しい」「介護になったら仕事と両立できない」「子育ての方針が食い違いそう」など、同居の悩みは多くあるでしょう。それらの悩みも、3つのタイプを選択するうえでの判断材料となります。
完全同居型のデメリット
常に一緒にいる形の完全同居型はまず、個人のプライバシーの確保が難しい点が挙げられます。また、2つの世帯の生活時間帯がずれていることで生じる食事時間や騒音の問題、共用するバス、トイレ、キッチンなどの利用時間帯が重なることへの対策も必要です。
ほかには、ライフラインの契約が一つなので、光熱費を世帯ごとに厳密に分けることはできません。どちらかが負担するか、按分の比率を決めることになるでしょう。
部分共用型のデメリット
キッチンやバスなど複数の水回りを設ける関係上、完全同居型に比べて建築コストや維持コストは高くなります。また、一括契約でも別々に水道やガスを使えば、料金は割高の傾向になると考えられます。
生活時間帯のずれなどの問題は完全同居型に比べてかなり緩和されますが、プライバシーの問題は依然残るでしょう。
完全分離型のデメリット
2戸分の設備を要する分、建築コスト、維持コストは部分共用型に比べてさらに高くなります。ただし家2戸に比べれば屋根や壁面の面積が小さい分、安価にできるでしょう。
プライバシーに関してはもっともストレスが少ないですが、その分親の状態の見守りはしづらくなります。
二世帯住宅の補助金の種類
この項では二世帯住宅で利用できる補助金をご紹介します。二世帯住宅以外でも利用できる助成金事業の助成額が、二世帯同居であることで拡張される例もあります。
助成金事業は、年度によって内容が変わったり、実施されなくなったりする場合があるので、常に最新の情報を確認して申請の準備を行いましょう。
1.地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、良質な木造住宅の供給支援・環境負荷の低減を目的に、一定の要件を満たした住宅に対して補助金が交付される制度です。
申請のタイプや加算の選択によって、70万円から最大140万円の助成金が交付されます。
この制度を申請するためには、施工業者が対象業者であることが条件となっているため、注意が必要です。大手ハウスメーカーや申請していない地域の工務店は、申請の対象外です。
三世帯同居(親・子・孫)対応住宅など、一定の条件を満たせば上限30万円の加算があります。ただし完全分離型の二世帯住宅の場合、独立した住居として対象にならない可能性があるため、要注意です。
また、加算には地域の伝統工法を取り入れることで、自治体による助成金加算がされる「地域住文化加算」もあるので、併せて施工会社に確認しましょう。
2.長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は文字通り、既存または中古の家のリフォームの際の助成金事業です。住宅性能向上のための優良なリフォームを支援する制度で、インスペクション(工事前現況調査)や住宅性能を高める工事の実施、工事の履歴と維持保全計画を作成して申請します。
補助金は80万円から最大160万円ですが、三世代同居対応改修工事を実施する場合は1戸につき50万円を上限として加算されます。
長期優良住宅の認定は、新築の際にも住宅ローン控除の優遇、不動産取得税の減税、登録免許税の税率引き下げなどメリットはさまざまです。
3.地域の住宅補助
住宅を購入する地域やリフォームする住宅の所在の自治体で、独自の補助金事業を行っている場合があります。
例えば埼玉県では2024年10月現在で熊谷市、飯能市、加須市、蕨市、坂戸市などで多世代同居の住宅取得などに対する助成金事業が行われています。金額は熊谷市の住宅取得で最大25万円、坂戸市の住宅取得で最大80万円などです。
自治体の助成金は、申請の条件やほかの制度との併用可否にも注意しましょう。
戸建ての二世帯住宅にすると税金が下がる?その仕組みとは
両親にとっての生活の利便性や、二世帯による豊富な資金力から、立地が良く資産価値の高い場所に二世帯住宅をつくった場合、心配になるのが相続税の発生です。
しかし、二世帯住宅は相続税を抑える効果があります。「小規模宅地等の特例 」を利用できた場合、土地の相続税を計算計算するもととなる土地の評価額を、80%減額することが可能です。
二世帯住宅は相続人と被相続人が同居しているため、小規模宅地等の特例が適用される対象の一つを満たすことになります。また、土地面積も、都市部の居住用物件はほとんどが100%の部分について、対象になると考えられます。
次項では、小規模宅地等の特例の適用条件を詳しく見ていきましょう。
小規模宅地等の特例の適用条件とは
二世帯住宅が小規模宅地等の特例を適用されるのは、「特定居住用宅地等」というカテゴリーで、亡くなった人の自宅として使っていた宅地等に対する特例です。適用条件は以下です。
- ● 限度となる面積330㎡に対して、評価額を80%減額する(評価額が20%となる)
- ● 相続前から被相続人と同居していることが必要
- ● その建物に住み、相続開始時から相続税の申告期限までその土地を保有していること
- ● 相続開始後も10か月以上その建物に居住していること
330㎡は約100坪に相当し、都市部では相当広い部類の土地面積です。同居については相続の開始(被相続人の死亡)以降も10か月の居住が必要です。なお、相続人のうち、被相続人の配偶者は同居・別居に関係なく、特例を受けられます。
小規模宅地等の特例を受ける際の注意点
1戸の二世帯住宅ならば、完全分離型の二世帯住宅であっても特例の対象となります。しかし、ローン契約の関係などで、親世帯と子世帯がそれぞれ区分所有の登記をしている場合は、被相続人の居住していた部分のみが対象となるので、事前に確認しておきましょう。
不動産取得税と固定資産税
二世帯住宅は、不動産取得税と固定資産税でも、優遇措置を受けることができます。
不動産取得税では、新築家屋1戸当たりで受けられる1,200万円の基礎控除が、2戸分受けられます。したがって同じ5,000万円の価格の住宅購入でも、出る差額は以下です。
通常の一戸建て
(5,000万円-1,200万円)×3%=114万円
二世帯住宅
(5,000万円-1,200万円×2)×3%=78万円
つまり二世帯住宅の納税額のほうが、36万円も少ない計算です。
固定資産税も同様に、控除額が2戸分となります。
そのため土地は通常の200㎡の2倍である400㎡までが固定資産税6分の1、都市計画税3分の1で計算できます。また、建物は通常の120㎡の倍である240㎡までの面積について3年間2分の1に軽減されます。
二世帯住宅の必要性から36坪(約119㎡)以上ののべ床面積の家屋をつくった場合でも、総面積分がフルに3年間2分の1の納税額となるでしょう。
二世帯住宅へリフォームする場合のチェックポイント
既にお住まいの家や中古物件のリフォームの場合は、新築と異なりあとから加わる世帯は意見を言いづらいものです。また、建物の躯体に手を入れたり、登記を変更したりするレベルのリノベーションとなる場合は、適法に行うための注意が必要になります。リフォームの際のチェックポイントを、以下で確認してください。
1.リフォーム業者
二世帯住宅へのリフォーム業者には、2つの世帯の意見をうまくまとめ上げて説得する手腕が求められます。
双方の意見をしっかりとヒアリングし、ある部分では片方の意見を容れながら、第三者の意見としてうまく双方を納得させるよう、はからってもらえると角が立たず、スムーズにプラン作成が進められるでしょう。
二世帯住宅のよくあるトラブルに通じている業者なら、安心です。
2.建ぺい率・容積率
2家族が生活するニーズに合わせて建物を大きくする場合、床面積が土地の用途制限=建ぺい率や容積率内に収まっているかは大切なポイントです。建築確認に通らない事態になると、是正のために工期が遅れてしまう原因となります。
建ぺい率・容積率の制限が厳しい場合は、希望する内容をよく詰めたうえ、増築以外の方法で対応するなど、リフォーム業者の営業担当や設計士と十分に話し合って対応を検討しましょう。
3.光熱費の支払い
ライフラインの増設は、料金負担についてあらかじめ話し合っておくか、電気・ガス・水道などそれぞれ独立したメーター・契約を行うようにして、のちにトラブルにならないようにしましょう。
前述のように、契約は一つにしたほうが、基本料金が重複せず、二世帯全体ではお得になります。
4.二世帯住宅の登記
どのように登記したいかによって、間取りのつくり方からローン・税金の支払いまで違いが出ます。どのような登記をすると良いのかは、FPなどの専門家に相談することをおすすめします。
以下が二世帯住宅の登記の種類です。
単独登記 | 二世帯の住宅を親か子かの単独の所有として登記する方法。工事費用を親と子で出し合った金額が実際の負担割合と異なる場合、贈与税の対象になるケースがある。 |
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共有登記 | 親と子の共有名義で登記する方法。取得の価格や費用をそれぞれの出資金額で按分し、それぞれの持ち分で所有権の登記をすれば、贈与税は発生しない。 |
区分登記 | 完全分離型の二世帯住宅の場合、区分所有で二世帯の住宅を2戸とみなして登記することが可能。所有者は世帯ごととなり、税金の軽減措置もそれぞれの世帯で受けられるが、相続時の小規模宅地等の特例では、被相続人の登記部分のみが優遇の対象となってしまう。 |
二世帯住宅におけるローンを利用する際の注意点
親子でも、お金の件でトラブルになる可能性はあります。以下の点に注意しながら、お得で適法なローン利用をしましょう。
ローン利用時の注意点
親世帯と子世帯、誰の名義でローンを組むかで住宅ローン減税の対象が変わり、控除の状況も変わります。リフォーム内容の内訳や支払いの方法、名義について、銀行に相談しながら家族でも話し合い、計画することが大切です。
ローン控除の手続きの流れ
住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。ローンを利用して住宅の取得、増改築などを行ったときに、一定期間、決まった式にしたがった計算結果の金額を、所得税額から毎年控除します。
毎年のローン年末残高の合計額をもとに控除額を計算します。取得やリフォームの翌年の確定申告から一定年数適用されます。会社員の方は2年目以降は年末調整での申告が可能です。
戸建て二世帯住宅に関するQ&A
本記事のおさらいを兼ねて、戸建て二世帯住宅のよくある質問と回答をご紹介します。
二世帯住宅にして良かったことは何ですか?
主に以下の点が挙げられるでしょう。
- ● 親の体調や生活状況が見守れるため、何かのときにすぐサポートできる。
- ● 親に子どもの世話を頼め、世代間のコミュニケーションになる。
- ● 購入や増改築の費用が二世帯でシェアでき、負担が減らせる。
- ● ライフラインを共有すると、基本料金が節約できる。
- ● 各種税金が優遇され、安くなる。
- ● 建築やリフォームの際に、助成金の給付や増額がある。
- ● 完全分離型は一世帯を使用しなくなった場合、賃貸もできる。
二世帯住宅の問題点は何ですか?
主に以下の点に注意が必要です。
- ● プライバシーの確保に配慮が必要となる。
- ● 世帯間で、各種の気遣いが必要となる。
- ● 同居によって、家庭内介護となる場合がある。
- ● 水回りが複数必要となる場合は、建築費用が割高となる。
- ● 水回りを共有する場合は、ライフラインの料金を分けるのが困難になる。
- ● とくに水回りを共有する場合、生活時間帯にルールが必要になる。
二世帯住宅は同居にあたりますか?
二世帯住宅は、台所など、生活用の設備を共用し、実態として一緒に生活している状態であれば同居の扱いです。
また、税法上では玄関や生活の設備がすべて分離独立し、内部でつながっていない構造でも、二世帯で分かれた区分所有登記がされていなければ、同居とみなされます。
なお、世帯主は1人にも2人にもできます。住民税や介護保険サービス利用が高額とならないように、同居の状態でも世帯を分けて世帯年収を下げ、税金や費用の負担を下げるケースが多いでしょう。
二世帯住宅は税金面で優遇されますか?
国や自治体は他世帯同居を推進しているため、二世帯住宅は相続税、固定資産税、不動産取得税、住宅ローン減税など、各種税金で優遇措置があります。
そのほか、請求先を一つにすれば、ライフラインの基本料金を一世帯分節約することができます。
戸建て二世帯住宅を検討中なら、モデルハウスを見学しませんか?
二世帯住宅の新築やリフォームのノウハウは、経験がない方でなければ分からない点が多いかと思います。Webサイトの情報や口コミだけではつかみづらい点も、展示場で実物を見学することで、家づくりの方向性や規模を決める助けとなるでしょう。
東京・埼玉・群馬など首都圏を中心に、多数の住宅展示場を開催するハウジングステージでは、最新の機能や安全性を持つ、一流ハウスメーカーのモデルハウスをご見学いただけます。事前ご予約で、住まいづくりのお悩みへの相談も承ります。
まとめ
戸建ての二世帯住宅がどのようなものか、メリットや注意点、補助金の給付や税金が下がる仕組みなどについて解説しました。
二世帯で成功を目指す場合、同居に向けての工夫やルールづくりなど、ソフト面での対応も大きなウエイトを占めるほか、思いやりや寛容さも、大切な要素となるでしょう。
元他人である異なる世代同士がうまくやるには、気苦労もあるでしょう。しかし昔からの習慣の良さと、新しい暮らし方の技術・情報をうまく組み合わせることで、新しい時代に向けた強い家族を構築できるチャンスです。成功をお祈りします!
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