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2020/10/23
収納をたっぷり確保したのになぜ足りないの? ありがちな食品庫・パントリーの間取り失敗事例

収納計画で失敗しがちなのが、面積の確保にばかり気を取られてしまうこと。
いくら大きな収納を作っても、使い勝手がよくないと、結局は収納不足に陥ってしまうことになるのです。
今回は、収納計画の中でも失敗が目立つ、食品庫・パントリーでの間取りの失敗事例と、便利な間取り例をご紹介します。
INDEX
収納の中でも失敗が目立つ食品庫・パントリー。その理由とは?
収納で失敗しがちなのが食品庫・パントリーです。小さな物から大きな物まで形もばらばら、それぞれに賞味期限があるので収納計画にもちょっとしたコツが必要です。
ひと昔前の収納プランは、面積を確保することを最優先に計画されていました。たとえば、ウォークインクローゼットは2畳確保するとよい、和室には1間幅の押し入れが必要など……。キッチンの食器棚なら90㎝あればよいといったように、容量を確保することが重要でした。
でもいくら大きな収納があっても、中がごちゃごちゃになって物がどこにあるか分からない、中がよく見えない、手が届きにくい、出し入れがしにくいといった状態では本末転倒です。
結局、いったん入れたら入れっぱなし、出したら出しっぱなし。大きな収納を作ったはずなのに、片付かない、収納が足りないという悩みを抱えている人は少なくないのです。
そんな”使えない収納”になってしまうことが多いのが、食品庫・パントリー。食品類は小瓶からレトルト、缶詰、醤油などの大瓶やカップ麺、お米、備蓄用の食料や水など、大きさや形のバリエーションがとても多く、使用頻度もまちまちで、またそれぞれに賞味期限があります。
その中でも特に多い失敗が、奥行きの深い食品庫・パントリーを作ってしまうこと。図面上ではたっぷり入ってよさそうなのですが、実際に使ってみると、奥にある物が出し入れしにくいために、結局後ろ半分が死蔵品置き場と化してしまうことに。
単に奥行きが深い食品庫・パントリーを作っても、実際に使えるのは手前の30㎝ほどだけ。残りはデッドスペースと同じですから、収納が足りない、どこに何があるか分からない、賞味期限が切れやすいといったことが起きてしまうのです。
それでは、食品庫・パントリーでよく聞く失敗事例をいくつかご紹介します。
- キッチンセットの一部に食品を収納するように計画したが、入りきらずに溢れている
- シンクの下に食品のストックを入れているが湿気っぽい
- 家電置き場の下を食品庫にしたが、いちいち腰をかがめてのぞき込むのが大変
- 奥行き60㎝の食品用大型収納庫を作ったが、奥行きが深すぎて出し入れがしにくい
- 中がごちゃごちゃで、スパイスなどの小瓶類のストックが行方不明になる
- あまり使わないレトルトや缶詰の存在を忘れてしまい、賞味期限が切れてしまう
- 災害対策で備蓄食料や水をストックしたいが、かさばるので入りきらない
- 食品置き場が冷蔵庫から離れているため、献立が考えにくい
- 食品庫・パントリーの入り口を開き戸にしたら、開けっ放しにできず開閉が面倒
- 食品の収納場所とキッチンが少し離れているので、動きづらい
- 食品庫・パントリーの中に充電用のコンセントがあればよかった
- 北面に作ったら結露が気になる、また湿気がこもってかび臭い
- 中が暗くて、食品類を探すのが大変
頻繁に使うだけに、さまざまな問題や支障がでやすいのです。それでは、食品庫・パントリーを上手に活用するにはどうすればいいのでしょうか?
使い勝手のよい間取り例をご紹介しましょう。
食品の備蓄も大切な時代、大型で使いやすい食品庫・パントリーの間取り
生活スタイルの変化により、最近では冷蔵庫が第2の食品庫として考えられるようになっています。これまでは常温で保存していた開封済みの粉や豆、お米なども冷蔵庫で保存しているご家庭も多いことでしょう。
料理の献立は、今ある食材を見ながら考えることが多いため、冷蔵庫と食品庫・パントリーはできるだけ近い位置に計画すると炊事がラクになります。
両手に食品を持ったままスムーズに移動できる間取りを目指しましょう。湿気が気になる場合は、壁面に調湿機能を持つ壁材を使うのもおすすめです。
上記は、食品庫・パントリーと家事室を一体化させた間取りの事例です。扉を引き戸にすれば、開け放したままキッチンから出入りができるので、両手いっぱいに食品を持っていてもスムーズに移動ができます。
また、勝手口からもパントリーに直接入れるので、買い物帰りや、宅配で受け取った食品や飲料など重い荷物を家の中でいちいち移動させる必要がなく、サッと片付けができます。
生活スタイルはご家庭によって異なりますので、我が家にとって家事がラクにこなせる間取りを考えてみましょう。
棚の奥行きが30㎝以上あると、小さな食品は行方不明になりがちに。奥行きを浅くするか、引き出しを取り付けて、見やすく出し入れしやすくしておくことがポイントです。
また、棚の奥行きや材質も工夫すれば、さらに使いやすい食品庫・パントリーになります。
棚の奥行きは収納する物のサイズに合わせて、30㎝、45㎝、60㎝の3種類があると便利です。また腰の高さに引き出しを付けると細かい物が収納しやすくなります。レトルトなどの厚みのない食品も、立てて引出しに入れておくと見やすく、出し入れがしやすくなります。
ゴールデンラインと呼ばれる、膝上から目の高さまでの出し入れがしやすい位置には、普段よく使う食品を収納しましょう。目の位置から高所に取り付ける棚は金属製のメッシュにしておけば、何が置いてあるのか下から見えるので便利です。
大事なことは、食品庫・パントリーにある物がひと目で見えるようにしておくことです。明るめの照明も忘れずに取り付けておきましょう。
また食品庫・パントリーは、少し大きめに計画し、そこに災害対策用の備蓄食料や飲料も保存しておくといざというときに安心です。備蓄品と普段使いの食品類を近い場所に保管することで、「ローリングストック」と呼ばれる災害対策がしやすくなります。
ローリングストックとは、日常の食品を多めに買い、普段から食べることで常に新しい食品を備蓄していく方法です。非常食は美味しくない、食べ慣れないので辛いといったことも、ローリングストックならいつでも美味しく食べられるのがメリットです。
最近は、家にいる時間が増え、また災害対策をしっかり行なうご家庭が増えています。食品庫・パントリーはゆとりあるサイズで計画しておくと、安心感が高まります
食品庫・パントリーのプランによっては、毎日の食生活が豊かになったり、食品をムダなく活用できるようになったり。
そして意外なところでは災害対策にも役立ちます。食品庫・パントリーの設置は失敗例が多いスペースではありますが、上手に作れば便利さが格段にアップしますので、しっかり検討してみてくださいね。
住宅展示場では、さまざまなスタイルの食品庫・パントリーを見ることができます。使い勝手のよい便利な間取りを見つけに、住宅展示場に出かけてみてください。
執筆・情報提供
尾間 紫(住宅・リフォームコンサルタント/一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター)

生活情報サイトAll Aboutリフォームのオフィシャルガイドとして業者選びからプランの立て方など実践的ノウハウを発信。テレビや雑誌、新聞掲載、講演などで活躍している。
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