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家づくりの雑学

2023.10.23

スマートハウスとはどんな住宅?メリット・デメリットや必要な設備とは

住宅の購入を検討するなかで、スマートハウスという言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。住宅の選択肢の一つとして、スマートハウスについて知っておくと良いでしょう。そこで本記事では、スマートハウスの定義やメリット・デメリットを詳しく解説します。

INDEX

スマートハウスとは?

スマートハウスとは、IT(情報技術)を活用して快適かつ省エネな暮らしを実現する住宅を指します。スマートハウスを計画する際は、以下の3つの要素が取り入れられています。

エネルギーを創る(創エネ) 太陽光発電でエネルギーを創る
エネルギーを蓄える(蓄エネ) 蓄電池によりエネルギーを蓄える
エネルギーを制御する(省エネ) ITによりエネルギー効率が最適になるよう制御する

住宅に設置した太陽光発電設備で電力を自給し、蓄電池で蓄えたあとにITで制御しながら家電などへ電力を分配する仕組みになっているのです。

また近年では、ガスや水道メーターも通信機能を備えたスマートメーターに切り替わっており、生活で消費するすべてのエネルギーの一元管理が可能になりつつあります。日本政府は2030年度の温室効果ガス排出削減の目標に向け、太陽光発電設備などを備えた省エネ住宅の普及を推進しています。

さらにAI技術の急激な進歩の影響もあり、不動産業界ではITを活用した省エネ住宅であるスマートハウスが注目されているのです。

参照元:
資源エネルギー庁|エネルギー基本計画 p.4
国土交通省|住宅・建築物の省エネルギー対策に係る最近の動向について p.5

スマートホームとスマートハウスの違い

スマートハウスとよく似た言葉として、スマートホームが挙げられます。スマートホームとは、ITで制御できる便利な設備や家電製品を積極的に導入した住宅です。たとえば、音声で操作できるスマートスピーカーで音楽をかけたり、玄関ドアにスマートロックを取りつけてスマートフォンで解錠したりすることなどが可能です。

つまりスマートハウスはITを活用して省エネ住宅をつくりますが、スマートホームはITを活用して便利に暮らすことを目的としています。

またスマートハウスが建物(ハード)としての住宅を示す言葉であるのに対し、スマートホームは住宅で暮らすライフスタイル(ソフト)を指すケースことが多いです。

ZEH(ゼッチ)とスマートハウスの違い

スマートハウスはZEH(ゼッチ)ともよく比較されます。ZEHとは「net Zero Energy House」の略称であり、実質のエネルギー収支がゼロ以下の住宅を指します。

ZEHは、太陽光発電で生成するエネルギーが生活で消費するエネルギーを上回るように設計されます。

スマートハウスとZEHの違いは、以下の通りです。

要件 スマートハウス ZEH(ゼッチ)
太陽光発電 必要 必要
ITによる設備・家電の制御 必要 任意
住宅のエネルギー収支 基準なし 基準あり
住宅の断熱性能 基準なし 基準あり

スマートハウスではエネルギー効率の最適化を目指しますが、エネルギー収支や住宅の断熱性能に基準は設けられていません。

一方、ZEHは資源エネルギー庁によって以下のように定義されています。

  • 太陽光発電などで生成するエネルギーを加味したうえで、年間の一次エネルギー消費量(家電などで消費されるエネルギーを熱量に換算したもの)が正味ゼロ以下であること
  • 断熱性能等級(国土交通省が定めた新築住宅の省エネ性能を示す等級)が5以上であること

ZEH(ゼッチ)住宅について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:
ZEH(ゼッチ)住宅とは?メリット・デメリットやお得な補助金制度を解説
ZEH(ゼッチ)とは? お得にZEHを建てる補助金情報

参照元:
資源エネルギー庁|ZEHの定義 p.3〜4
資源エネルギー庁|ZEHロードマップ検討委員会とりまとめ p.8
国土交通省|住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要 p.4

IoT住宅とスマートハウスの違い

IoT(Internet of Things)とは、さまざまなモノをインターネットに接続する技術を指します。またIoT住宅とは、家電などをインターネット経由で制御できる状態にした住宅です。

たとえば、エアコンやテレビなどのリモコンを個別に使う必要がなくなり、スマートフォンやタブレット一つで操作できます。また外出先からインターネットを経由し、ペットの見守りカメラの映像なども確認可能です。

スマートハウスでは、住宅のエネルギー効率を最適化するために家電や設備をインターネット経由で一元管理して制御します。そのため、IoT住宅の一種といえるでしょう。

スマートハウスに必要な設備

スマートハウスを実現するには、以下の3つの設備が必要です。

  • 太陽光発電
  • 蓄電池
  • HEMS(ヘムス)

それぞれ詳しく解説します。

太陽光発電

太陽光発電とは、太陽光エネルギーを電気に変換する発電方法です。半導体に太陽光をあてることで電子が放出される現象(光電効果)を利用して、電気を生み出します。スマートハウスを実現するにはエネルギーを自ら生み出す必要があるため、太陽光発電設備が欠かせません。

太陽光発電のメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット デメリット
● 電気代を節約できる
● 災害時などの停電対策になる
● 環境にやさしい
● 設置費や維持費が高い
● 電気の供給が不安定なことがある
● 設置できない場合がある

太陽光発電ではソーラーパネルを設置するため、日当たりの良い方角にまとまった面積の屋根面が必要です。またソーラーパネルは1枚あたり15kg〜20kgほどの重さがあり、標準的な枚数である20枚を設置した場合、屋根に約300kgの負荷がかかります。

事前にソーラーパネルを想定して構造計算や屋根の設計をする必要があるため、スマートハウスを建てる場合は住宅を計画する最初の段階で施工会社に伝えておきましょう。

蓄電池

蓄電池とは、電気を一時的に蓄える機能を備えた電池です。太陽光発電設備そのものには蓄電機能がありません。そのため、夜間や雨天時などの発電できない時間帯には電気を使えない可能性があります。

そこでスマートハウスでは、太陽光発電と家庭用蓄電池を組み合わせて生活に必要な場面で住宅へ電力を供給します。

蓄電池のメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット デメリット
● 電気代を節約できる
● 災害時などの停電対策になる
● 導入コストが高い
● 設置スペースの確保が必要

蓄電池を利用すると、太陽光発電で生成した電気だけではなく、電力会社から購入した電気を蓄えられます。そのため、夜間などの単価が安い時間帯に電力会社から電気を購入すれば電気代を節約できるでしょう。また停電時にも、一定の間は電気を使用できる点もメリットです。

HEMS(ヘムス)

HEMS(ヘムス:Home Energy Management System)とは、ITを活用して住宅で使用するエネルギーを管理するシステムです。HEMSのコントローラーと家電や設備を家庭内ネットワーク(Home Area Network)で接続し、自動制御したり使用量などのデータを可視化したりします。スマートハウスでは太陽光発電設備や蓄電池とHEMSを連携し、発電状況や天候に応じて蓄電量や家電などへの電力の供給量を調整できます。

HEMS(ヘムス)のメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット デメリット
● エネルギー効率を最適化できる
● エネルギーの使用量をリアルタイムに把握できる
● 初期費用が高い
● 対応する家電機器が少ない

HEMSにより直接家電を自動制御してエネルギー効率を高めるだけではなく、使用量が視覚的に把握できることで省エネ意識が向上する効果も期待できます。現状はHEMSに対応した家電機器が少ない点が課題ですが、政府は2030年までにすべての家庭へのHEMSを普及することを目標にしています。そのため、今後対応機器は増えていくでしょう。

参照元:内閣府|HEMS普及への課題と提案

スマートハウスのメリットとは

スマートハウスのメリットには、以下の3点が挙げられます。

  • 光熱水費を節約できる
  • 災害時に備えられる
  • 補助金を利用できる場合がある

順番に詳しく見ていきましょう。

光熱水費を節約できる

太陽光発電と蓄電池を活用して電気を自給自足するため、一般的な住宅よりも電気代は大幅に安くなります。またHEMS(ヘムス)によって家電をコントロールして電気の使い方を最適化できるため、電気の使用量が少なくなるでしょう。

HEMSにスマートメーターを連携できれば、ガスや水道の使用量や料金もグラフなどにより視覚的に確認できます。さらにメーカーによっては、HEMSコントローラーに光熱水費の使用量の目標値を設定すると使いすぎた際に通知できる機能があります。

意識して生活スタイルを改善すれば、ガス代や水道代の節約にもつながるでしょう。

災害時に備えられる

住宅に太陽光発電設備を設置しているため、電力会社から電気の供給が途絶えても自宅で電気を使用しながら生活できます。蓄電池を備えていれば、夜間などの発電できない時間帯に停電になっても困りません。

また家電機器などをHEMS(ヘムス)で制御すれば、災害時には自動的に省エネモードへ切り替わるため電力の消費をおさえられます。さらに見守りカメラなどをスマートフォンと連携しておけば、外出先で災害が起こった場合も自宅の様子を確認可能です。

HEMSには、災害時の警報が発令されたり火災警報器が作動したりした際にアラームで知らせる機能もあります。このように、非常事態を早期発見して対処できる点もメリットです。

補助金を利用できる場合がある

現状は国が支援する補助事業はありませんが、各自治体が積極的にスマートハウスの支援事業を実施しています。2023年度に実施された支援事業の例は、以下の通りです。

自治体 補助事業の名称 概要
熊谷市 スマートハウス補助金 市内に一定の条件を満たしたスマートハウスを新築または購入する場合に補助金を支給する
川崎市 スマートハウス補助金 太陽光発電設備などの対象の設備を導入する際に補助金を支給する
豊中市 スマートハウス等支援補助金 太陽光発電設備や蓄電システムを設置する場合に補助金を支給する

またZEH(ゼッチ)の要件も満たしていれば、ZEH関連の補助金の利用も検討してみましょう。補助金を利用する際は、住宅工事の着手前に申請手続きをする必要があります。工事のスケジュールにも影響するため、施工会社と相談しながら計画を進めましょう。

参照元:
熊谷市|スマートハウス補助金
川崎市|スマートハウス補助金
豊中市|スマートハウス等支援補助金

スマートハウスのデメリットとは

スマートハウスには、以下のようなデメリットもあります。

  • 電気の供給量が不安定な場合がある
  • 初期費用と維持費用が高い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

電気の供給量が不安定な場合がある

スマートハウスのエネルギーの主な供給源は、太陽光発電です。雨やくもりの日は発電量が少なく不安定になり、生活に必要な電力を補えない可能性があります。不足した分は電力会社から購入する必要があるため、電気代を予測しづらい点がデメリットです。

また太陽光発電で余った電力を売却することを検討している方も多いでしょう。固定価格買取制度(FIT制度)を利用すれば、一定の期間余剰電力を電力会社に売却できます。

しかし、訪問販売や展示場の営業担当者などが商品説明として売電シミュレーションをする際は晴天時の発電量を想定する場合が多く、実際の住宅では想定より利益が出ないケースも少なくありません。電力会社の売電価格も減額傾向にあるため、太陽光発電の導入コストを回収するのに長い期間がかかる恐れがあります。

導入コストを考える際は、売電価格だけでなく、本来電力会社から購入するはずだった電力価格も含めて考えましょう。

参照元:資源エネルギー庁|再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック p.8

初期費用と維持費用が高い

スマートハウスは、一般的な住宅より初期費用と維持費用が高い点がデメリットです。スマートハウスに必要な設備の初期費用の相場を見てみましょう。

設備 導入費用の相場
家庭用太陽光発電設備 78万円~130万円
家庭用蓄電池 80〜200万円
HEMS 15万円〜20万円

これらの費用に加え、手持ちの家電がHEMSに対応していなければ買い替える費用もかかります。また法的な義務ではありませんが、太陽光発電設備は4年に1度程度の定期点検が推奨されており、1回あたり2万円〜3万円程度の費用が必要です。

太陽光発電のパワーコンディショナー(発電した直流電気を家庭用の交流電気に変換する機器)や蓄電池は建物に比べて寿命が短く、10年〜15年程度で更新しなければいけません。そのためスマートハウスの購入を検討する際は、初期費用だけではなく維持費用も忘れず考慮しましょう。

参照元:資源エネルギー庁|太陽光発電について|運転維持費 p.54

まとめ

本記事ではスマートハウスの定義とメリット・デメリットを解説しました。スマートハウスは、太陽光発電・蓄電池・HEMSの3つの設備で快適かつ省エネな暮らしを実現する住宅です。

エネルギーの自給自足と高効率化で光熱水費を節約でき、停電などの災害時にも電気を使いながら生活できるメリットがあります。一方、天候などにより発電量が不安定になることや、初期費用や維持費用が比較的高いというデメリットも無視できません。

住宅の購入予算や発電シミュレーションなどを十分検討し、購入する場合は補助金などを活用しましょう。

執筆・情報提供

吉本えり

二級建築士・整理収納アドバイザー1級資格保有。
大学院まで建築学を専攻し、ハウスメーカーでの勤務を経てWebライターとして独立。
主に建築、不動産、インテリアなど住まいに関する記事を執筆。執筆実績100記事以上。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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