2025.11.13
注文住宅の手付金とは?相場や支払う時期、払えない場合の対処法を解説
不動産取引では、諸費用や税金のほかに、手付金・内金・頭金などの支払いを求められることがあります。
どんな性格のお金かは都度説明があるでしょうが、それぞれどんな意味があるのかや、払わないとどうなるのかまで、話が及ぶことは少ないかもしれません。
本記事では、注文住宅の手付金とはどのようなものか、相場や支払う時期、払えない場合の対処法や、よく似た費用との区別を解説します。住宅購入の際の参考にしてください。
INDEX
注文住宅の手付金とは?なぜ支払う必要があるの?

この項では注文住宅の手付金の定義や仕組み、支払う理由などを説明します。それぞれの意味や役割を整理しましょう。
手付金の3つの種類と役割
まず手付金については、以下の3つの性質(役割)があります。
- ● 証約手付:契約(不動産売買・工事請負)成立の証拠
- ● 解約手付:契約当事者双方に解約の権利を与える
- ● 違約手付:契約を履行しない場合に没収(請求)される
証約手付は、不動産売買や工事請負の契約成立につき、その証拠となるように支払われ、契約の重みづけ、安定を図る効果を発揮します。
逆に、どうしても契約を解除したい場合もでてくるでしょう。その際には解約手付として買主からは放棄、売主側からは倍額を返還という形で、理由を問わずに解約ができ、トラブルを避けるという役割を果たすのです。
そして、契約当事者のどちらかに不履行(契約違反)があった場合も、放棄か倍額返還で違約金として機能します。ただし損害賠償が生じる場合は、手付金とは別途の支払いが必要です。
内金・頭金などの用語との違い
手付金と似た用語は多くありますが、整理すると下記のような違いとなります。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| 内金 | 購入代金の一部として、契約後かつ残代金支払い前に支払うお金。契約に影響する効力はなく、前払いという性質のお金。 |
| 手付金 | 購入代金の一部で契約後に支払う。契約に対して3つの効力を持つ。 |
| 申込金 | 契約する意思があることを示すもので、気持ちが定まったとき支払うお金。必須なものではなく、契約に至らなかったときは返金される。 |
| 頭金 | 購入にかかる費用のうち、自己資金で用意できるお金。借入以外に用意する必要がある。多寡がローン審査や金利に影響する。 |
| 着工金・中間金 | 着工時や上棟時など、工事の進捗に合わせて支払うお金。注文住宅は代金を複数回に分けて支払うことが多い。 |
| 残金 | 融資実行の準備ができたら、売主に残金を支払う。引き渡しや必要な登記も同日に行う。 |
取引における手付金の位置づけは、以下の図のとおりです。契約の直後に支払った手付金は契約が予定通りに進むと、頭金の一部に充当されます。

頭金がなくとも融資は受けられますが、多く入れられると、住宅ローン審査が通りやすくなる、月の支払いが楽になる、金利が優遇されるなどのメリットがあります。
以下は、注文住宅を土地と一緒に購入した人の頭金平均額です。

注文住宅の手付金はいつ払う?

注文住宅の手付金を支払うタイミングは、土地の売買契約時と、建物の新築工事契約時があります。その流れは以下です。(どちらも説明から手付金支払いまで、同日に行う)
土地の売買契約時
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 宅地建物取引士より重要事項説明を受ける | 物件の内容について説明を受け、理解・納得する。 |
| 2. 不動産売買契約書の読み合わせをする | 売主との契約の内容を確認したうえで、売買契約を結ぶ。 |
| 3. 不動産売買契約書へ署名・押印する | 契約を成立させる。 |
| 4. 売主へ手付金を支払う | 証約・解約・違約に効力のあるお金として、手付金を支払う。 |
建物の新築工事契約時
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 建築工事請負契約書の説明を受ける | 設計図書・工事費見積書・仕様書などを含め、契約内容の説明を受け、理解する。 |
| 2. 建築工事請負契約書に署名・押印する | 契約を成立させる。 |
| 3. 建築依頼先へ手付金を支払う | 証約・解約・違約に効力のあるお金として、手付金を支払う。 |
土地・建物に共通していえるのは、物件について充分な説明を受け、契約を終えたあとに、契約に関する効力や権利を安定させるために手付金を支払うという点です。
また、手付金は約束の証拠金という性質から、現金での支払いが一般的です。
手付金は売主都合で契約解除にならない限りは、基本的に戻りません。売主都合の場合いつ戻るかは、約定のタイミング次第です。支払った倍額が戻ってきます。
関連記事:
家の買い方とは?購入手続きや入居までにかかる費用を徹底解説|住宅展示場のハウジングステージ
注文住宅の手付金の相場はいくら?

注文住宅の手付金の相場は、前述のデータで土地・建物合わせて、物件価格の10%弱が主流でした。例えば4,000万円の物件で9%ならば、360万円となります。
上記は全国的な平均値なので、5~10%と見ておきましょう。4,000万円であれば、200〜400万円です。
なお、頭金の一環として手付金を多く入れる、あるいは人気物件の場合などに多く支払うのはメリットも多いのですが、制限があるケースも。不動産会社(宅建業を営む会社)が売主の場合、物件価格の20%を超える手付金を受領できないように、宅地建物取引業法によって定められています。
注文住宅の手付金に関する注意点

手付金を支払うにあたって、以下の点は注意しながら進めましょう。
- ● 手付金を住宅ローンに組み込むことはできない
- ● 住宅ローン特約の内容を確認する
- ● カードローン・キャッシングの利用は避ける
- ● 解約可能なタイミングを確認しておく
手付金を住宅ローンに組み込むことはできない
手付金を支払うタイミングは契約時なので、住宅ローンの実行前となります。住宅ローンの本審査は、土地建物の取得にかかる契約書を提出して行うためです。
したがって、住宅ローンから手付金を調達することはできません。自己資金から金額を設定して、準備する必要があるのです。
住宅ローン特約の内容を確認する
前述のように、手付金は買主の都合で契約の履行ができない場合は、戻ってこないことになっています。これに例外を設けておく特約が、契約書の住宅ローン条項です。
住宅ローンの審査が通らなかった場合は、ほかの金融機関を当たりますが、同様の借入金額に対して、どこも審査を通らないという可能性があります。その場合プランを再度見直しなどとなり、契約は履行できません。
そこでローン条項によって契約は白紙、手付金は返還というように定めておくのが一般的です。この点は必ず確認しておきましょう。
カードローン・キャッシングの利用は避ける
手持ちの資金では、諸費用や頭金の支払いに不安があるという場合、一時しのぎでカードローンやキャッシングで用意するのは禁物です。
その借入履歴はすぐに金融機関に共有されるため、ローン審査で申告したのと異なる状況を招き、住宅ローンそのものが審査に落ちる可能性があります。
解約可能なタイミングを確認しておく
「キャンセルする場合でも手付金は返金する」と口頭で説明を受けることがあります。しかし実際には応じてもらえないこともあるため、手付金返金の条件は必ず契約書面の記載を確認するようにしてください。
また、ローン条項についても、契約書に解除可能な条件や期日が記載されているので、契約調印前に確認しておきましょう。
注文住宅の手付金が払えない場合の対処法

家づくりの際には、さまざまな項目の出費が重なるもの。手付金支払いのタイミングで必要な現金を準備できない状況には、対策を考えておく必要があります。
親族から一時的に借りる
前述のように、住宅ローン審査の条件に抵触するような借入は避けなければなりません。
そこで、あらかじめ親族に相談して、借入、あるいは贈与という形で資金調達をする方法があります。
贈与の形をとり、かつ基礎控除の110万円を超える場合は、念のため借用書を作成しておきましょう。
また、住宅取得の資金として父母や祖父母から贈与を受ける際には、一定の条件を満たすことで省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外でも500万円までは、贈与税が非課税となります。
このほか、勤務先からの社内融資は住宅ローン審査で自己資金扱いとなり、悪い影響がない場合もあるため、相談してみましょう。
ご参考:
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁
関連記事:
親からの支援で住宅ローンを組む場合の注意点や方法について解説|住宅展示場のハウジングステージ
減額の交渉・相談をしてみる
目安となる金額を集めるのが困難な場合、建築会社や不動産会社へ相談してみるのも一つの方法です。
手付金には下限が設けられているわけではないので、話し合い次第でしょう。しかしあまり低い金額で合意していて、買主側のキャンセルが起こる場合を売主は懸念します。
売主との関係性悪化を避けるために、充分な「買いたい意思」の表明や、手付解除の期限、自己資金を総額いくら入れるかなどを材料に、誠実に交渉しましょう。
つなぎ融資の利用を検討する
つなぎ融資とは、住宅ローンが実行されるまでの間に、同じ金融機関から別口の融資を受けることです。住宅ローンで一括返済するまでの間、利息のみを返済します。住宅ローンよりも金利は高くなりますが、無担保での借入が可能です。
分割融資を受ける
分割融資は、住宅ローンを複数に分けて実行する商品です。つなぎ融資より低金利の反面、複数回の融資実行によって、融資手数料が高くなることがあります。また、審査が厳しく誰もが利用できるものではありません。
自己資金が少ない場合は、分割融資とつなぎ融資も含めて、早い段階から金融機関へ相談しましょう。
関連記事:
住宅ローンを利用して注文住宅を建てる方法を流れに沿って解説|住宅展示場のハウジングステージ
まとめ

注文住宅の手付金とはどのようなものか、相場や支払う時期、払えない場合の対処法や、よく似た費用との区別を解説しました。
売主との信頼関係をつくるとともに、買主の権利も確保するのが手付金です。まれに、契約後に安くてさらに条件の良い土地や、他社の建築プランが浮上してしまうこともあります。あるいは、進んでいる話にどうしても納得がいかないこともあるでしょう。
そのようなときに、多額の手付金を献上してしまわないように、購入する商品の検討は、慎重に行いたいものです。
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総合住宅展示場ハウジングステージ編集部
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